中指人差し指親指 午後。 家のことはユカリに任せ、俺とウィンフィルドはセブンステイオーにニケツして王立魔術学校へと向かった。第二王子のマインを訪ねるためである。「なあ、どうしてアポ取らないんだ?」 道中どうしても気になったので聞いてみる。今回の訪問は驚くべきことにアポなしである。仮にも王子を訪ねるというのにだ。俺はその理由が分からなかった。「キャスタル王国より、ジパングの方が、上。っていうアピール」「あー……」 ジパングとか久々に聞いたわ! そういやそんな設定あったなあ。 当事者が忘れてるくらいの微細な情報をよくもまあキッチリと把握してるなこいつは。これで召喚されてまだ一日しか経ってないなんて信じられん。昨日シルビアあたりから聞いたんだろうが、きっと情報の聞き出し方が物凄く上手いんだろう。常に最高効率で必要な情報ばかりを吸収してなきゃこうは行かない。まるで歩くRTAだ。「感心してるトコ、アレなんだけど、着いたんじゃない?」「おう。着いたな」 こいつのエスパーっぷりももう慣れた。 俺たちはセブンステイオーから降りずに、そのまま校門へと突っ込んでいく。「きゃあっ!」「セカンド様!?」「うそっ!」「どうして!?」 あちこちから悲鳴……というか黄色い声が響く。主に女生徒たちが興奮した様子できゃあきゃあと言っていて、誰も馬のまま乗り入れてることにツッコんでくれない。「おるかーー?」 しょうがないので校庭でぐるぐるしながら「マインおるかー?」と繰り返し呼び出し続ける。 すると、俺がマインを探していると気付いたのだろう生徒が何人か校舎の方へと全力疾走していった。 ……数分後、マインが血相を変えてこちらへ駆け寄ってきた。「セカンドさぁん!? 何やってんの!?」「馬を置いとく場所がないんやで」「だからって乗り入れないでくださいよ!」 久々に会ったのに良い感じでツッコんでくれる。嬉しい。「あのさ、落ち着いて話せる場所とかない? あと馬を何とかしたいんだけど」「落ち、えっ、馬、えぇ? ちょ、もう急すぎるんですよ! そこで大人しく待ってて!」「早くしろー」「何なのもうっ! 久しぶりに会えたと思ったら! あぁーっ!」 マインは情けない声をあげて頭を抱えながら校舎へと戻っていく。その数秒後にマインの指示でやってきた第二王子付きのメイドが厩舎まで案内してくれた。「現在サロンを手配しております。少々お待ちください」 何ともご丁寧にお辞儀までしてそんなことを言う。うちのメイドと違って落ち着きがあるな。これが一流か。 ちなみにサロンの意味がよく分からなかったのでウィンフィルドに聞いてみた。談話室みたいなものらしい。流石は百科精霊。「セカンドさん! 無茶苦茶ですよ! アポはないわ馬のまんま乗り入れるわそのうえ校庭を走り回るわ!」 しばらくして移動、サロンに到着するや否やお冠のマインに罵倒される。 俺は「すまんすまん」と適当に謝りながら、右手をグーにして前に突き出した。「ぁ…………もうっ」 マインは少しの逡巡の後、同じようにして拳を突き出し、俺の拳にコツンとぶつける。「えへへっ」と、どこか嬉しそうにはにかむ笑顔は相変わらず女子にしか見えない。だが王子だ。「あれ、そちらの方は? それに、シルビアさんとエコさんの姿も見えませんが……」 すっかり機嫌の良くなったマインが、ウィンフィルドに視線を向けて言う。