「おおっ! こいつはなんと上等なワインだ! これが銅貨1枚だと?! 売ってくれ! この樽ごと売ってくれ!」「いやいや、他のお客さんもいるので、そいつはちょっと拙いなぁ」「おい! 独り占めは止めろよ!」「こっちにも飲ませろ!」「そうだそうだ」 案の定、他の客からブーイングが出始めた。 そして、他の客も金を払うとワインの立ち飲みを始めた。橋は落ちているし、どうしようも出来ない。ほぼ、やけ酒に近いのかもしれない。 売れ行きが良さそうなので、樽をもう1個買って、次の12本を入れる。 ワインは1杯銅貨1枚(1000円)だ。カップが1杯250mlだとすると9Lで36杯取れる。売上は3万6千円。 1回樽を空にすれば、樽2つとワインの元が取れる計算だな。次のセットからプラスになるわけだ。「おおっ! こりゃ、マジで美味いぜ!」「こんな上等なワインが銅貨1枚とは……」「貴族邸で飲んだ物より上等なのだが……」 商人が集まってきて樽ごと売ってくれコールが凄いのだが、瓶のワインを樽に入れるのが面倒なので断った。 一応、シャングリ・ラで樽入りのワインを探したのだが、売っていない。「プリムラ、ワインの空樽ってどのぐらいするんだ?」「え~、金貨3枚ぐらいだと思います」 60万円か?! ワイン樽だけでも、一財産だな。そういうば、この世界は物を運ぶのにワイン樽に突っ込んで運んでいる場合が多い。 小物や、果物、豆類、穀物などもワイン樽で輸送されたり、売られてたりしている。 ボロボロになった穴あきのワイン樽でも、コンテナ代わりとしての需要があるようだ。 ワイン樽って丈夫だからな。「お客さん、ワインは売れないが空樽なら売ってもいいぜ」 俺はシャングリ・ラから、新品のワイン空樽を購入した。容量は225Lで7万5千円だ。 それを客の目の前に出した。さすがにこれだけ大きな物を出すからには、人の目は誤魔化せない。「アイテムBOX!」 客から、ざわめきが起こる。「こ、これは、なんと見事なワイン樽だ。さぞかし名のある名工の手による物では?」 商人達はしゃがみこみ、樽の隅から隅までチェックを入れている。「まぁな」「この樽がいかほど……?」「ここだけの特価、金貨3枚(60万円)でいい」「買った! 3樽くれ!」「いいのかい? 橋が落ちてるから、しばらく動けなくなるんだぜ?」「構わん。商売とは出会いだ、出会った時が運命だと思って買わねば、その後一生会えないかもしれんからな」 日本語でいう、一期一会か。