「かっちゃん」と言ってみた。すると、遠くばかりを見つめていた勝己の目線がするりと自分にむけられた。それだけの、当たり前の事なのに、胸がきゅ、と締め付けられる。自分で呼びかけておきながらどきどきしてしまう。そんな感情を持て余す間にも、勝己は目で「何よ」と訊いてくる。「えと、ありがとね」色々と、それはもう色々と思う事があるのだが、その言葉が一番相応しいと思ってそう言った。「隣にいたのがかっちゃんで頼もしかったし、だから勝てた、と思う」また傷めてしまった両方の腕の感覚を確かめるように手を握ったり開いたりしながら言う。自分の腕だけでは力だけでは、守りきれなかった。