「……ひっく……ひっく……ぐすっ………………ひどいよぉ……」 現在夜の7時頃――私は昨日からずっと、ベッドの上で泣き続けていた。 神崎君と自分の誕生日にデートする事を楽しみにしてたのに、先に彼の事を盗られていたからだ。 そしてその後の彼が言った、私の誕生日を忘れていたって言葉が、私にトドメを指した。 だって、それじゃぁ……私の事なんて気にも留めてなかったって事じゃん……。 私の事なんてどうでもいいから、誕生日の事を忘れてたんでしょ……? ……でも、これは私の我が儘だ。 私は神崎君の彼女じゃない。 だから、彼が誰といつ遊ぼうと文句を言える立場じゃない。 神崎君からすれば、私に理不尽に怒られたようにしか思えないだろう。 ……私だってそう思ってる。 だけど、だけどね……ここ最近神崎君が何でも私の我が儘を聞いてくれていたから、今回も受け入れてくれると勝手に思ってたせいで、我慢できなかった。 いつの間にか私は、そこまで我が儘な子になってたんだ……。 でも、仕方ないじゃん……。 私は中学以降、ずっと冷徹という仮面をつけて人を突き放してきた。 そんな私は人の温もりが凄く欲しかった。 そしたら、絶体絶命だった私の事を助けてくれて、しかも私が好意を寄せていた人と同一人物の人が現れた。 その彼は困った顔をしながらも、私が我が儘を言ったら優しく受け入れてくれる。 だから、私はどんどん我が儘になって、もっと甘えようとしていた。 そんな私が一番楽しみにしていた事を彼に断られた。 でも、彼に悪気があったわけじゃない。 それに私が彼に誕生日を教えたのは、一緒に住むようになった初日だった。 それは今からもう、約二か月も前の事になる。 当時喧嘩ばかりしていた私が言った事なんて、彼はすぐ忘れるようにしていたのかもしれない。 そんな彼に、私は昨日自分の理不尽な怒りをぶつけてしまった。 だから、本当に酷いのは彼じゃなくて私だった。 それなのに、昨日彼はずっと謝り続けてくれた。 このままだと、彼に本当に嫌われてしまう。 だけど、頭ではそう理解できているのに、心が言う事を聞いてくれない。 もう本当に……西条さんに神崎君を盗られてしまう……。 でも、もう私にはどうしたらいいのかわからない。 だから、泣き続けていた。