リリィは床の上に崩れ落ちて泡を吹く高山を見て動揺しまくった。 リリィが本気で切りつけていたのは間違いない。 でも、その後突き飛ばされて壁に頭をぶつける程の事故になるとは……。 しかも顔面は血だらけで、足を見るとどう見ても骨が折れていた。 転倒時に壁にぶつかったせい? 軽い気持ちで本気を出した事でこんな事になるとは! 己の過ちに後悔する。 リリィは軽い気持ちで素人相手に腕試しをして、事故を起こした事を激しく後悔した。「な、な、なんでこんな事になっちゃうのよ!? き、君は、実力を隠してるタイプの勇者様じゃないの!?」 顔面蒼白、顔をぐちゃぐちゃにして泣き始めるリリィ。 とんでもない事をしちゃった感と後悔がリリィを襲っていた。 * 俺は目の前で泣きじゃくるリリィさんを見て、ミスをしてしまったと後悔をする。 ヘマしたわ。 一言で言うとヤリ過ぎた。 つまずいてコケる程度の演技で良かった。 それで足を捻挫する程度の演技で良かった。 なのに、転倒して、足を折って、壁に頭をぶつけて顔面血だらけになって、泡を吐く。 ちょっとオーバー過ぎたな。 でも全てはやってしまった事! 今更後戻りなんて事は出来ない! やるならとことんこの演技を貫くしかない! ここは対処を施した後、それらしく気絶する事としよう。『システム!』『何でしょうか勇者様?』『悪いんだが、俺の怪我の遅効性回復治療と生命維持の監視を頼む。万一異常値になったらブーストモードとして全ステータスを一気に全快にして起こしてくれ』『はい』『あとな、俺はこれから寝るから。全身の血流を半分に抑制して青ざめた感じの顔にした上に状態を気絶。俺の治療が終わってから半日ぐらい経ったら気絶を解除して起こしてくれ』『了解いたしました。御命令の状態設定を完了しました』 あとは成り行きに身を任せるか。システムちゃんがしてくれた気絶状態が効いて来たのか意識が遠くなってきた。 俺は意識を暗い闇の中に落として寝ることとした。 * はあ、どうしよ? どうしよ? リリィは混乱していた。「僕、大怪我させちゃったよ! どうしよ!」 顔からどっと冷汗が流れるリリィ。「なんなんもー! この子! 全く短剣がかする気配すらも無かったのに! なんで腕が当たっただけで物凄い転倒をして、足が折れて、おまけに壁に頭をぶつけて失神しちゃうのよ! このまま死んじゃうとか二度と起きれなくなって植物人間とかは無いよね? そんな事になったら、僕は傷害罪に問われちゃうよ! まずはギルドに戻って医務室の僧侶を連れてきて魔法で治療してもらって……それまで絶対に死なないでよ!」 タカヤマに実力が有るなら、この程度の攻撃は容易に避けれるはずだった。 このタカヤマという冒険者は明らかにおかしかった。 冒険者ランクFなのに、短剣も持たずに笑顔でリリィの攻撃をかわすだけだった。 かわすにしても普通なら武器ぐらいは構えて武器の受け流しも使って回避するのが普通だ。 それなのに身のこなしだけで僕の短剣の避け続けた。 それも笑顔で。