「……お前はお前を見下してきた冒ぼう険けん者しや達とよく決闘を行っていたそうだな」 何を思ったのか、途と端たんに話を変えるシルヴィ。互いに大切な何かを差し出し、勝者がそれを手に入れる。それが決闘だ。王おう侯こう貴族の間では軽率に行われることはないが、冒険者の間ではわりと軽はずみに行われている。 蓮司は決闘を利用して喧けん嘩かを売ってくる相手を片かたっ端ぱしから負かし、見せしめに相手の財産を奪うばっていた。それで蓮司の噂うわさが広まり、軽率に見下す輩やからが減った過去がある。「……ああ」 蓮司は少し不思議そうに頷いた。どうして別の決闘の話が出てくるのか、想像がつかなかったのだろう。だが――、「お前は決闘で負けた相手に約束を守らせなかったことはあるのか?」 というシルヴィの質問によって、その意図を理解した。「………………ない」 蓮司は敗者から容よう赦しやなく約束の財を取り立ててきたことを思いだし、シルヴィから顔を背そむけて気まずそうに答える。「つまり、お前は自分に有利な約束は相手に絶対に守らせて、自分に不利な相手との約束は守る気がないと言っているのか? つまりは、逃げるのだな?」 シルヴィは侮ぶ蔑べつのこもった眼まな差ざしを蓮司にぶつけた。「っ……」 蓮司は俯うつむいたままびくりと身体を震わせる。