優しく諭すと咲く示唆や「ご主人様、私もあまりとやかく言いたくはありませんが……男、だったのでは?」 家に帰るやいなや、ユカリが冷ややかな顔で問い詰めてくる。 そういえば、皆にはフランボワーズ一世を「死んだはずの男」と説明していた。 だが、今や見る影もない。あの男くさいハゲたオッサンの「フラン」は、モデル体型の超絶美形な女の子「ラズ」へと変貌を遂げている。そう、ユカリが嫉妬を口にするくらいには可憐な美少女に。 とはいえ、中身がどうとか前世がどうとか、一から説明するつもりはない。ゆえに、ここはゴリ押しだろう。「なんか性転換してた」「よくそんなに堂々と嘘がつけますね……」 呆れられた。でも嘘じゃないんだよなぁ……。「まあまあ。うちが男って偽ってただけや。センパイはワルないで」「……左様ですか」 流石はラズ、空気が超読める。 こいつ、昔から頭の回転がかなり速かった。そういうところを気に入って、よく一緒に行動していた節もある。「先輩だと? ううむ、前から気になっていたのだが、二人は一体どういう関係なのだ?」 なんとか誤魔化せそうな雰囲気の中、シルビアが真正面から質問してきた。こういうところ好き。「あー……」「ちゅ、中学が一緒やったんや!」 俺が言い淀んでいると、ラズがすかさずフォローを入れてくれる。こりゃもう全部任せた方がよさそうだな。「チューガク? な、なんだ? 何かいかがわしいものかっ?」「ちゃうわ! なんでやねん! 中学ってのは、えーとな、あれや、十代前半くらいの子供が通う学校みたいなもんや」「学校か、なるほど。となると……セカンド殿は学校に通っていたことになるのか?」「おいどういう意味だ」 信じられないというような顔で呟くシルビア。こいつ俺のことを馬鹿だと思ってやがるな? ちくしょう否定できねえ。「――失礼いたします」 俺が打ちひしがれている間に、リビングにキュベロとビサイドが入ってきた。 二人は俺とユカリたちに丁寧な礼をして、それからレンコの方へと視線を向ける。「お嬢、無事で御座いましたか……!」「お嬢! おいらぁ、一目見て安心しやした。健康そうで何よりですわ!」 義賊R6の生き残りは、今のところこの三人。ウィンフィルドが短くない期間を費やし調査してもレンコしか見つかっていない現状、もうこれ以上の発見はほとんど期待できないだろう。それをわかっているからか、二人はレンコとの再会を心の底から喜んでいた。 その気持ちはレンコも同じに違いない。だが、彼女は何故だか不満げな顔をした。「……あんたたち、あたいより先に頭を下げる相手がいるんだね」 跳ねっ返りも、ここまで来ると度が過ぎる。「あいつはわかるよ。でもね、そのメイドたちよりもあたいは下がるってのかい?」 俺を指さしてあいつと言う。メイドたちってのは、ユカリとシルビアとエコか。 確かに、使用人よりも下の扱いをされたら疑問に思うかもな。しかもユカリはダークエルフだから、この世界の常識的にはとても偉いとは思えないのだろう。まあ実際は家主の俺より偉いんじゃないかと錯覚する時があるくらい家の中での地位は高いが……。「…………」 キュベロは珍しく黙り込んだ。