彼女たちから僕は変わり者だと言われるけれど、それは日本人の血なのだと分かって欲しいかな。 それにたくさん楽しませてあげると、エルフさんはポップコーンを僕に食べさせてくれるからね。 あーんをして頂戴と促され、ぱくりと菓子を食す。やはりキャラメル味のポップコーンは甘く、美味しかった。 ひょっとしたらウリドラが広間を整えているのも、同じ理由なのかもしれない。天下の魔導竜だというのに、うっかり日本人の影響を受けてしまったのだ。 そう考えると少しだけ面白い。まさかあの古代竜が、自分でも気づかぬうちに価値観を変えているとはね。 最後の映画予告を終え、ゆっくりと館内は暗闇に包まれてゆく。 もう映画が始まるのだ。 そっと耳元に「始まってしまうわ」と囁かれ、お返しに「始まってしまうね」と囁き返す。帽子のなかで長耳がかすかに揺れた時、ブーーと上映を告げるブザーが響いた。 この古めかしい演出を、僕は何故か好ましく思った。