「ザビリアは、今すぐ私と来て大丈夫なの? 誰か声を掛ける相手とかがいるなら、都合がいい時に迎えに来るよ?」私の質問を聞くと、ザビリアはしょんぼりとしてうつむく。「大丈夫。僕は、ずっと一頭きりだから……」「そ、そうか……。じゃ、小さくなれる?」言いながら、団服のボタンを上から幾つか外す。そして、小さくなったザビリアを団服の内側に入れると、止められるところまでボタンを掛けた。「苦しくない、ザビリア? お城に着くまで、我慢してね」「フィーア、あたたかい……」そう言ったっきり、ザビリアはぴくりとも動かなくなったので、すぐに眠ってしまったのだろう。うんうん、子どもってすぐ眠くなるよね。私は、馬に乗ると、できるだけ揺れないようにゆっくりと走らせた。寝る子は育つって言うものね。ザビリアが、健康に育ちますように。王城に着くと、すぐに魔物騎士団へ向かったが、途中で第六騎士団の騎士たちとすれ違った。「フィ、フィーア、その腹はどうしたんだ?」「おま、食欲があるのは分かるが、少しは我慢しろ?」……もしもし?いくら何でも、こんなに膨れていて、自前のお腹のわけがないでしょ。第六騎士団の騎士たちって、私のイメージが悪すぎるんだけど!不愉快な気分になりながら、魔物騎士団の建物に入っていくと、前からギディオン副団長が歩いてきた。彼は、私を見つけると、腰に手を当て、馬鹿にしたように斜め上から見下ろしてきた。「はっはあー、第一騎士団長ご推薦の有能な騎士様じゃあないですか。ごきげんよう、お散歩ですか?」「用事があって、近くの森まで出ていました。ただいま戻りました」ギディオン副団長は、ふんと鼻をならすと、そのまま通り過ぎようとしたが、思い直したように立ち止まり、私の腕をつかんだ。「そういやお前にも、従魔がいるんだってな。腕、見せてみろ」そうして、私の返事も待たずに、袖をたくし上げられる。パティ副団長補佐といい、魔物騎士団の騎士って強引だなと思いながらも、されるがままになっていると、ギディオン副団長は私の左手首にある従魔の証を見つけ、数回瞬きをした。それから、顔を近づけて、まじまじと証を見ると、意味が分からないという風につぶやく。「何だこれは? こんな細くて、証として成り立つのか? というか、どんな魔物が相手なら、こんな細くなるんだ?」