「セカンドさん。ボクがこんなこと言うのもおかしな話なんですけど、今までよく問題になりませんでしたね」「何が?」「いや広すぎなんですよ貴方の家が。王宮より広いってどういうことですか?」「すごいだろ?」「……ええまあ」 第一宮廷魔術師団と第二騎士団、合わせて三千人以上がファーステスト邸の敷地内に余裕で収まる。家屋は少し足りていないが、十分に何とかなるレベルであった。 呆れているのはマインだけではなく、ハイライ大臣やメンフィス第二騎士団長、ゼファー団長やチェリちゃん、果てはフロン第二王妃までぽかんとしている。「家と使用人の数が不足してるみたいだから、その辺は自分たちで何とかしてくれ」「第二騎士団は野営するから大丈夫だと思うけど……ちなみに使用人は何人なの?」「俺もこの前聞いて驚いたんだがな、三百人はいるらしい」「何でそんな嬉しそうに言うんですか」「自慢の使用人だからだ。皆、なかなかに強いぞ」「ちょっと待って怖い。それって第一宮廷魔術師団の特訓みたいなことをセカンドさんが毎日施してるってこと?」「いやまだそこまではやってないけど、行く行くは」「ほ、ほどほどにお願いします。ホントに」 三百人の猛者集団ともなれば王国としても無視できないってことだろう。「国王としての自覚が出てきたな」とからかってやると「そんなことより会議です」と話を逸らされた。「あ、セカンドさん。お帰り。準備は、どう?」「おう、ウィンフィルド。見ての通りだ」 俺が主要メンバーを連れて湖畔の家に入るや否や、ウィンフィルドが現れた。 リビングにはシルビアとエコ、ユカリの姿もある。執事のキュベロはどうやら、三千人を超える客人の対応に奔走しているみたいだ。「では到着して間もないですが、会議を開きましょう」 円卓を囲むと、ハイライ大臣が真っ先に口を開く。チェリちゃんは豪邸が珍しいのか、席についてもまだ辺りをキョロキョロと見回していた。「うーん。会議って、いっても、ねー」 ウィンフィルドはハイライ大臣の言葉に首を傾げる。 しかし、ここにいる俺以外の全員がこう思ったはずだ。「首を傾げたいのはこちらの方だ」と。「明日の、午後、奴らを、殲滅します。以上」「…………は!?」 皆、一様に驚愕した。 それもそうだ。たった今、尻尾を巻いて逃げてきたばかりだからである。にも関わらず、早くも明日に打って出るなど、誰が考えるだろう。 だが――「向こうもそう思っている」からこそ、チャンスは今しかない。「ま、待って。上手くいくとは思えません」 マインが尤もなことを言う。ハイライ大臣もメンフィス第二騎士団長も、ゼファー団長もそれに同調した。「ウィンフィルドさん。何か考えがあるのですか?」 冷静なのはフロン第二王妃であった。話を先に進めるため、ウィンフィルドの策を促す。「当然。今の戦力のままで、あっちを殲滅なんて、できっこないから、ね」「! なるほど、戦力を増強するのだな。しかし何処から……」 ゼファー団長の気付き。すると、不意にチェリちゃんが俺の方を向いて挙手をした。