というのもこの遺跡には、なかなか珍しい構造強化術式なる術式が残されているらしく、覚えれば彼女の精霊魔術をより強化できるのでは、という期待がある。 なんて、別に成功を期待していないというか、今のままで十分だと思っているけどね。研究が失敗しても、それはそれで気にしないだろう。 そのあいだ僕は近くの川でのんびり釣りでもして過ごすと……。「たわけ、夢の世界でまで遊んでどうする。ほれ、たらふく食って太るまえに剣の修行じゃ。新しい武器も拾ったばかりであろう」 などと思っていた僕が甘かった。 向こうの世界では可愛らしい黒猫だというのに戻るなりこれだ。 そんなこんなでマリーは楽しくお勉強を、僕はキツキツに絞られた雑巾のよう汗水をたらし――あれえ、扱いが違うんじゃない?――それから青森へと舞い戻る。 なんだか、こっちの世界のほうが慌ただしいなあ。 僕まで日本へ帰りたくなってきたよ。