「うーん、たしか全員で45名と聞いたけど、これくらいの規模が一番進めやすいのかな」「そうねぇ……私の考えでは、足を引っ張る人の少ないところが大きいと思うの。あなたの言う通り、数だけ揃えても有益になりづらいと思うわ」 働きアリの法則は有名だけど、それと同じ状況になりかねない。 自分は働かなくて大丈夫だと思う者は、いざ危機になると逃げ出しやすい。元から責任を放棄しているからこその行動だけど、それにより皆の腰まで引けてしまうだろう。 だったら最初からいないほうが良い。「そう考えると、アジャ様が少数精鋭にこだわる理由も分かってくるな。ふうん、案外と面白いね、集団で攻略するというのも」 あとの課題は、消耗品や食料など物資の受け取りか。 第二階層の本部まで取りに戻るのは、さすがに時間のロスになる。かといって危険を考えると少人数で取りに行くことも難しいので、全員で向かわなければならない。「もうひとつ面倒なことがあるわ。ほら、私たちは眠るときだけ別行動しているでしょう? 一緒に休むよう何度かドゥーラから交渉を受けているの」「うーん、僕らのいないとき襲われると、厄介な状況になりかねないからねぇ」 それもあって、念のためウリドラは向こうに残り、子育てをしている。 何かあれば駆けつけてくれるし、最悪の事故にはなりづらいだろう。その代わり、日に日に彼女のストレスが溜まりつつある事は知っている。 まあ、基本的にウリドラは集団行動が苦手だからねぇ。 それと、この階層主の情報がまるで出て来ないことも課題か。 今はそれほど気にしなくて構わないが、前層のシャーリーは階層主なのに頻繁に姿を現すという特殊性があった。 もしも同じように現れた場合のため、心構えはしておかないと。 などとノートには現状、そして課題が次々と埋められてゆく。 こういうものへ熱中してしまうのは僕らの性格らしく、はっと気がつけばもう8時だ。「あら、いけない。せっかくの週末なのに、迷宮のことばかり考えていたわ」「ん、ウリドラのこともすっかり忘れてた。怒られないと良いけどなあ」 などと考えながら、ベッド脇にある魔具のもとへ向かう。 夏の週末といえば、もちろん夏らしいイベントをすべきだろう。そう考えた僕らは、現れた黒猫へ明るく声をかける。「これから水着を買いに行くよ。プールにも行くけれど、もし興味があるなら途中で夢の世界へ迎えに行くかい?」 瞳をキラリと輝かせ、にゃあにゃあ!と元気いっぱいにウリドラは鳴きだした。 そういえば以前、ラーメンについて教えた事があったかな。そのせいで口元をぺろりとピンク色の猫舌は舐めた。 カーテンをじゃっと開けば、外もだいぶ晴れている。 どうやら絶好のプール日和のようだ。