……その自分の思考に、ルナマリアは場違いなおかしさを感じた。 もちろん、そんなことは口に出せない。 すべてルナマリアの憶測だ。それも、根拠となるのは「ソラの姿が竜のように見えた」という一事のみ。 人が幻想種の力を宿すなど賢者の学院でも聞いたことがない。これまで渉猟しょうりょうしてきた数多あまたの書物にも記されていなかった。 考えてみれば、ソラに対して怯えていたのはルナマリアだけで、ラーズたちはまったく気づいた様子はなかったし、それはギルドマスターや受付嬢も同様だった。 これでは、ソラが竜であるという意見を口にしたところで、休息をすすめられるのがオチであろう。 そう思って視線を床に落としたルナマリアは、そこではじめて床の上で鈍く光る金貨に気がついた……