にゃ〜ん(大丈夫か、ご主人)……?」 テーブルの席に腰掛けたところで、タマは心配そうな声色でアリアの頬に自分の頭をスリスリと当てる。 タマの気遣いに、アリアは「ふふっ……ありがとうございます、タマ……」と、思わず微笑を浮かべる。 それを見計らったところで、アリーシャが話を続ける。 ただならぬ雰囲気に気づいたようで、ステラたちも二階から降りてきて、離れた位置にあるソファーから話を聞いている。「まず、ヴァサーゴがルミルスを狙う理由ですが……これはアリアちゃんも見当がつくのではないですか?」「魔族がルミルスに……あっ! 〝賢者ノ石〟が狙いですか……!?」 アリーシャに問われて、アリアはハッとした様子で声を上げる。 数年前、アリアの故郷、ルミルスは魔族の軍勢に襲われ、その時にアリアはアリーシャに命を救われた。 そしてその時の魔族の目的が、今アリアが口にした賢者ノ石という代物が狙いだったのだ。「アリア、賢者ノ石とは何なのだ?」「ステラちゃん、賢者ノ石とはモンスターに対して特殊な結界を作り出すことができる、特殊なマジックアイテムの名前です。賢者ノ石によって形成された特殊な結界があれば、Aランク以下のモンスターはその場所に近づけなくなるんです」 ステラの質問に、アリアが答える。それを聞き、今度はリリとフェリが「どうしてヴァサーゴは賢者ノ石を狙うの……?」と不思議そうな顔を浮かべる。 それに対し、アリーシャが――「リリちゃん、フェリちゃん、賢者ノ石には特殊なマナがとてつもない量秘められています。どうやら魔族はそのマナを〝魔王復活〟に使う技術を開発したようなのです」 ――と補足説明する。(なるほど……。数年前のルミルスへの襲撃は魔王復活を企む魔族たちが起こしたものだった、というわけか。そしてヴァサーゴが復活した今、賢者ノ石を狙う可能性が高いか……) アリーシャとアリアの話を聞き、タマは理解する。 さらに、アリーシャからベルゼビュートによる予言もあるので、間違いはないだろうと補足が為される。「ルミルスにヴァサーゴが攻めてきた場合は、今までと違い、拠点と賢者ノ石を守るための防衛戦となります。それには一人でも戦力が多い方がいいです」「アリーシャ様、言いたいことはわかります。もちろん故郷のため、そして人々のために……わたしも一緒に戦います! それにヴァサーゴを逃がしてしまったのはわたしですから……」 アリーシャの言葉に、アリアは決意するまでもなく応える。「ふんっ! そういうことなら我も行くのだ。ヤツには召喚獣に苦戦させられた礼をしなければならないのだ!」「私も行くわよ! 魔王の復活なんて許さないんだから!」「私もですぅ〜!」 ステラにリリ、フェリ……。 三人もメラメラと闘志を燃やす。「にゃ〜ん(もちろん、我が輩も一緒だ。ご主人よ)!」 タマも元気に鳴き声を上げると、アリアの胸の中でフンスと鼻を鳴らす。「みんな……はい! 頑張りましょう……!」 アリアは感嘆の声を漏らすと、自分も改めて闘志に火を灯す。 猫と少女たちの戦いが、再び幕を開ける――