上から、ニャニャスの肩に担がれたクロトンが降りてきた。 かなり痛めつけられたようで、ボコボコだが、とりあえず生きてはいる。「あ、あんたが助けに来てくれたのか」「アネモネとマリーから頼まれて仕方なくな」「申し訳ない……」「クロトン、死体の中に、こいつ等の頭かしらはいるのか?」「ああ、そこの髭面がそうだ」 LEDライトで照らすと髭面が恨めしそうに俺を見ているのだが、とんだお門違いだ。 とりあえず、リーダーをやったのなら追撃は無いだろう……。 一緒に降りてきたニャニャスの話では、2階に居た無頼達は女と合体していたらしい。「女も殺したのか?」「いや、部屋の片隅でガタガタ震えていただけだから、そのままにしてやったが」「そうか」 娼婦かもしれないし、シャガの所に居たような、どこからか拐さらわれてきた女達かもしれないからな。 だが今回は一々確認している暇は無い。 すぐに、ここを離れないと。「旦那! なんですかありゃ?」 クロトンを抱えた、ニャニャスが俺にユ○ボの事を聞いてくる。「鉄の化物の事か?」「そうですぜ」「あれが、俺の言う事を聞く召喚獣だよ。解ってると思うが喋るなよ?」「あんなの話したって信じてもらえねぇ」 クロトンを荷馬車の所へ連れていくと、犬の面を脱いだ彼の女房とマリーが顔を出した。「お前達、こんな所にまで」「あなた!」「お父さん!」 親子3人で感動の再会だが、そんな時間は無い。急いでここを離れないと。 皆を荷馬車に乗せると、ニャニャスから武器を回収――闇夜の中を走りだした。 クロトンの話では、村へと繋がっている東門の近くに廃屋があると言う――そこへ向かう事になった。「マリー、お父さんが助かって良かったね!」「うん……」 マリーがアネモネに抱きついて涙を流している。2人は良い友だちになれそうだったのになぁ……。「あなた、ごめんなさい。家の貯金を全部使って、この方に助力をお願いしたのです」 奥さんが、ここへやってきた事情を彼に話す。「こんな事に巻き込み、まことにすまない。まさか助けが来るとは思ってなかった……」「可愛いマリーと美人の奥さんに、お願いされちゃ断れんだろう。アネモネからも頼まれたしな」「面目ない……」「忙しいのはこれからだぞ? 明日中に荷物を纏めて村を出ないとダメなんだからな」「ええ?」 俺の話に、クロトンは驚きを隠せないでいるのだが、奥さんが事情を説明した。「すまないサイネリア。全部、俺のせいだ」「一家で新しい土地を見つけましょう」 抱き合う夫婦だが、クロトンの顔は暗い。「そうだな……しかし……」 クロトンの心配は金の事だろう。まぁ、それも何とかなる。 荷馬車は暗闇の街をひた走る。花街以外で、夜中に出歩いている連中など殆どいない。 俺たちは、ほぼ無人の街を抜けて、東門近くの廃屋へと到着した。