目が覚めたら冷たい床の上であった。どうやら椅子から崩れ落ちはしたようだが頭を打ったわけではないようだ。そして日差しを見ると案外すぐに目が覚めたらしい。これもMPが増えたおかげだろうか。次の日だったら笑えないが。そしてなにより良かったと安心できたのは、以前と同じように気絶してMPが尽きての繰り返しにならなかった事だろう。延々MPを注ぐマンになって廃人となるかもしれないと思ったのだが、どうやら魔法陣の方が焼ききれたようだ。これは失敗したからなのか?材料を確認してみるが、減ってはいないようである。何故失敗したのか原因は今のところわからない。考えられるとすれば、俺が目処をつけた材料以外の素材が必要だったか、あるいは特定の条件で必要MPが足りなかったか……。だがMPは魔力回復ポーションで回復済みであったのだ。となると、材料か?もう一度魔法空間を開き、異変が無いかを探す。すると、随分前からずっと入れっぱなしにしてあった素材がなくなっていることに気がついた。そういえばこれをアイナ達から回収した覚えは無い。だが、ずっと初期から持ち続けていて、何に使うかもわからないものであった。それがないということは、一回目の時になくなったのだろう。これは隼人に霊薬を渡すついでに聞いてみるしかないな。となればもうここに用はない。霊薬もできたし、早いところ隼人の所へ行って話を聞こう。俺は錬金術師ギルドの受付嬢に挨拶をしてから表に出る。「「むうーー」」……。待ち構えていたのは二人して膨れっ面のウェンディとシロであった。「あー……おはよう?」「おはようございます!」「ん、おはよう」ちゃんと挨拶はしてくれるものの眉は逆ハの字のままであった。「ご主人様? どうして私たちを置いていかれたのですか?」「いや、錬金術師ギルドに錬金しに来ただけだしさ。二人もたまには羽をのばしたいかなって……」「別にどこだっていい。主と一緒ならどこでも楽しい」「そうです。シロの言うとおりです!」いや勿論嬉しいんだけどさ。せっかく王都に来たんだから好きに楽しみたいかなって思うじゃないか。わざわざ俺に付き合ってつまらない錬金を見てもしょうがないだろうし……。「えっと……。じゃあどこかいく?」「行きます!」「ん、行く」ひとまず二人の行きたいところに行こう。隼人に俺が霊薬を作ってみせる! と言ったわけでもないしな。それに今は不機嫌なお二人さんの機嫌を直さねばならない。クリスには悪いが、後で確実に治してあげるから勘弁してほしい……。さて、まずはウェンディの要望の服屋である。「せーの」「「「いらっしゃいませー!」」」元気に挨拶をする店員さんに軽く会釈を返すと、片っ端から真剣な眼差しで男物の服を選ぶウェンディ。どうやらウェンディは服を選ぶのがお気に入りのようだ。基本的に服に無頓着な俺にとっては喜ばしいのだが、できればたまには自分の服を選んでほしい。ということで今回はウェンディの服を選んでみる事にする。と言ってもセンスなどわからないし、なんとなく似合いそうだなで決めるしかないのだが。「お客様」「ん?」こそっと話しかけてくれたのはこのお店の店長さん。せーのっと小さく合図をしていた人だ。「もしかしてお連れ様の服をお探しですか?」「ああ、そうだけど」「でしたらおすすめのコーナーがございますよ。是非こちらに!」