一緒に食事って浮気のはじめの一歩だよね『白木さん、今日の放課後、予定ある?』 とりあえず授業が終わってから、白木さんへとメッセージを送ってみた。『と、特にありません。どうかしましたか? ドキドキ』 一分もしないうちに返信キタコレ。文章でどもる必要はないだろうとか、ドキドキとか必要なのかとか、ツッコミたいのはやまやまだがとりあえず華麗にスルーして本題へ。『じゃあさ、ナポリたんの家ってイタリア料理店なんだけど、よければ食べに行ってみない? 昼飯も食い損ねたし』『行きたいです! 行きたいですけど……お金が』『お金の心配はしなくて大丈夫だよ。じゃあ裏門前で落ち合おう』『はい!』 お金の心配は、ぶっちゃけ身内価格、すなわちタダだから必要ない。 というわけで、午後の授業中に大きな音を立てないよう必死に抑えていた腹の虫を満たしてやるべく、待ち合わせ場所へ。 俺が裏門に着くと、すでに白木さんが待っていた。なぜかしきりに前髪を気にしている様子。「お待たせ。早いね、白木さん」「あ、緑川くん……お誘いいただき、ありがとうございます。でも、本当にお金の心配しなくていいんですか?」「大丈夫大丈夫。じいちゃんもばあちゃんも俺には甘いから。じゃあ、腹も減っただろうし、行こうか」「は、はい。えへへ……」 白木さんがニパッと屈託のない笑顔を見せる。 そうそう、この笑顔だよ。 本当にこれだけでパスタ三皿はいける。「嬉しそうだね白木さん。そんなに腹減ってた?」「え、い、いいえ、それもありますが……緑川くんの初めてのお誘いですから……」「……??」 そろーりそろーりと、白木さんが俺の横へ並ぶ。 何かに遠慮してるような気配だが、俺は白木さんの言葉の意味をようやく理解し、慌てた。「ち、違うから! 別にデートに誘ったわけじゃ……」「……」「わけ、じゃ……そ、そう! 今後の打ち合わせもかねて! 親睦を深めよう会だから!」「親睦を深めるデート、じゃ、だめなんですか……?」 ああもう。目をうるうるさせんな。 だから俺たちはまだお互いに相手がいる状態なんだってば。ほぼ関係は破綻してるけど。 さすがに今のままデートとかしたら、佳世たちと同類に成り下がってしまう。ブリからハマチへリターンバックだ。それは避けたい。