世界一位を目指すために洗脳魔術は不要。勝負の場を整えるために使っても、勝負そのものに使ってはならない。その考えは、ウィンフィルドによって目標を皇帝にすり替えられていてもまだ健在であった。だからこそ、セカンドは検査をパスするためだけに最後の一回を使おうとしている。 ユカリは理解した。本当に「すり替わった」だけなのだと。 洗脳されていても、セカンドの根の部分は、完全にセカンドのままであった。 結果はわかりきっている。彼がこのまま行けば、普段通りの考えで、普段通りの行動をして、普段通りに有言実行するだろう。 そして、洗脳が解けた時、彼が何を思うかも――。「ご主人様」「ん?」 だとすれば、もう、彼女が言えることは、これしかない。「どうか、楽しい一ヶ月を」