「ふはは。それは貴様に二人の行き先を伝えた後になって事情の変更があったからだ。何がどうなって事情が変わったのかは知らんが、貴様が立ち去った後にハルトが再び俺の前に現れた。そしてルシウスも俺の前に再び姿を現した。あとはルシウスの指示に従い、ハルトをこの村へおびき寄せただけだ。貴様ともあろう者が、ルシウスの方が一枚上手だったようだな。かなり焦あせっていたと見える」 デュランはのらりくらりと嘘をつき、そして堂々と受け答えをして自らの潔白を説いた。「……確かに、今回ばかりは本当にしてやられましたよ。おかげで色々と散々な目に遭あってしまった。まあ、済んでしまったことをとやかく言っても仕方がありませんがね。ルシウスが死んでしまった以上、真相を確かめることもできませんし、貴方に罰を与あたえたいわけでもない」 レイスは再び大きく溜息をつき、渋しぶ々しぶと引き下がる。「それにしても、どうやってこの場所を突き止とめた? よくここがわかったな?」 デュランが感心して尋ねた。「間に合わなければ突き止めることができても意味がありませんがね。ここへたどり着いたのはほぼ決着がついた瞬しゆん間かんですから。まあ、手段は秘密です」 レイスはそう言うと、デュランが握るルシウスの剣に視線を向ける。「まあ、いいがな。で、他に用件はないのか? 俺はさっさと王都へ帰りたいのだが」 デュランはレイスの視線に気づきつつ、億おつ劫くうそうに話を切り上げようとした。「まあお待ちを。一つお願いがございまして、そちらの剣をお返しいただけないでしょうか?」 と、レイスはデュランに頼む。「ふむ。返せとは妙みようなことを言う。ルシウスが殺された時点で、この剣の所有者はルシウスからハルトに移転したと考えるのが道理であろう? ハルトがいらんと言うから、俺が譲り受けたのだ。となると、この剣の所有権は俺にあると考えるべきではないか? それを返せだと?」「その剣はもともと私がルシウスに貸かし与えたものなのですよ。つまり、真の所有者は私だったというわけです」「それを証明する手段はあるまい?」