俺は《魔召喚》を発動し、ミロクを召喚する。「――主、話がある」 直後、ミロクは現れるやいないや、話の流れをぶった切って喋りだした。「おお、いきなりどうした」「余は生まれて初めてあのような大勢の人間を目にした。まさに御披露目に相応しい大舞台、余のために準備していただいたこと、心より感謝仕る」「いや、俺があの人数を集めたわけじゃないが」「否。余は大観衆を前に余の抜刀を披露できたことが嬉しいのだ。この機会は、彼の島にて常住起居するままでは決して訪れ得なかった。ゆえに、主に心からの感謝を。これで死した侍たちも少しは浮かばれるというもの」「ああ、そうか、そういうことか」 こいつは死んだ侍たちの意志を背負って生きてきた魔人。つまり、侍と意志を同じくしている。大観衆の前で腕自慢ができて嬉しくない侍などいない。ミロクの中の侍の血が喜べば、こいつもまた喜ばしいのだろう。 あっ。「なるほどなぁ。だからお前、あんなに張り切ってたのか」「……よせ、主。他の者も聞いている」 恥ずかしがってんな。「なんか、技、出しちゃってたもんな。三つも」「……………………」 無言で腕を組み、静かに瞑目するミロク。心なしか頬が赤い。「なんというか……思ったより可愛いっすね」「もの凄く人間っぽい魔物なのね」 そうなんだよ。人間を吸収し続けた結果なのか、元からなのかはわからないが、ミロクは見た目も中身もとても人間的なやつだ。 だからこそ、安心してアカネコを任せられた。 俺から見ても抜群に【抜刀術】のセンスがあるアカネコが、何百という侍の魂を受け継ぎ、更には0k4NNさんの魂までをも吸収したミロクのもとで、一体どう化けるのか。興味は尽きない。 ミロク曰く「開花は近い」とのこと。毘沙門戦が楽しみだ。 ……あ、毘沙門戦で思い出した。「そうだユカリ、明日はなんだっけ」「また確認していなかったのですね、ご主人様」「何度も言わせるな。確認するわけがないだろう」「いえ、ですから何故……いや、言ってもしょうがないですね」 ユカリは半ば呆れながら、明日の予定を教えてくれた。「明日は千手将戦です」