こうして、互いにミス待ちの状態となった。 確実に勝ちたいからこその選択である。 あらゆる手段で揺さぶり続ける男と、ひたすら耐えチャンスを待つ男。 美しさなど欠片もない勝負。 だが……それをニル・ヴァイスロイがやっているという事実に、感動を覚える者もいた。「――それまで! 判定により、ケビンの勝利!」 一時間が経過し、ニルの敗北が決まる。 試合終了の合図と同時に、肩で息をしていたニルが、四肢を放り出して地面に寝転んだ。「……見違えたよ。驚いた。君はもう、私の知っているあのニル君ではないようです」 ケビンは歩み寄り、そう語りかける。 ニルは深呼吸をして息を整えると、鼻で笑って言った。「負けてちゃ意味ない」「それは」「魔術戦、向いてないだろう? 僕」「…………」「わかってるよ。でも、この半年だけ……やってみたかった。どうしても」 半年間の挑戦。それが、失敗に終わったということは。「じゃあな」 ニルは立ち上がり、ケビンに背を向ける。「待って」 ケビンは一言、ニルを引き止めると、最後の言葉を伝えんと口を開いた。 その後のニルの人生を決定づける言葉である。「大昔……君が、私に魔術を教えてくれたことがあったでしょう?」「……ガキの頃の話か。あれは下手くそだったお前に自慢したかっただけだ」「ええ、そうかもしれません。しかし」 にこりと微笑んで、ハッキリと。「私は嬉しかった! それだけです」