銀の帰還「いやぁ~飛んだ飛んだっ! アズリー、もう一回!」 てへっとした表情のまま、俺を拝んでくるベティー。 そう、俺はあの場を脱出したのだ。辛うじて動く指先で、新魔法の空中浮遊魔法を発動して強引に皆を、俺の身体ごと持ち上げた。 すると、驚いた皆は、宙に浮く身体の方に興味が向いた。くすぐりから脱した俺は、そのまま庭まで出てから皆を振り落としたのだ。 ブレイザーとライアンは早々に離れたものの、ベティーやブルーツ……いや、それ以外のヤツらは、驚くもすぐに楽しくなってしまったようで、何とか俺の身体を掴み、「あっちあっち!」、「もっと高くー!」など、多種多様な注文までつけはじめたのだ。 正直、この銀というチーム、好奇心だけで言えばランクS以上だと思うのは俺だけだろうか? 終いには、ポチが「アレやってくださいよ、アレ!」とか訳のわからない事、言うもんだから、ブルーツもベティーも「何々!?」と全然放してくれなかった。ポチのあの言葉は完全に飲み会でやる強引なネタ振りである。そんなバリエーションがあったら、俺には愚者の称号なんて付いてないだろうに。 最終的には究極限界化して、色んな魔法を駆使して他のヤツらを振り落としたが、ベティーは相変わらずこんな様子だ。 というか、安くなったな、究極限界……。「ええい、まずは飯が先だ、飯っ」「まじ!? 楽しみにしてる、アズリー号!」 まったく、ベティーには敵わないな。 俺とポチは居間まで行き、春華が用意してくれた朝食を食した後、広間へ向かった。そう、食後にブレイザーに来るようにと言われたからだ。 広間へ行くと、リーリア、そして銀のメンバー全員が腰を下ろしていた。「おぉ! イデア、ミドルス! 久しぶりだな!?」 そう、全員いたのだ。「へっ、相変わらず間の抜けた面してやがるな」「何言ってるのよ、さっきの魔力に当てられて、アンタ緊張してたじゃない」「い、いやあれはだな……ぬぅ」「まぁ何にしても久しぶりだね。魔王を倒してきたんだって?」「あ、あぁ。そこのリーリアと一緒にな」「私も頑張りましたよー!」 ポチのアピールの後、イデアが渋い顔を俺に向けた。「それだけの事をやってのけて、頑張ってなかったら世界中の人間が怠惰って事になっちゃうわよ」「はははは、ちげーねぇ」 イデアもミドルスも、何だかんだで柔らかくなったもんだ。 これだけ年を重ねれば、そうもなるか。「まぁ、その、なんだ?」「自分で言うって言ったじゃないか」「いや、それでも目の前にするとよう……」 イデアもミドルスも何を言ってるのだろう? それにしてもこの二人、こんなに仲良かっただろうか。悪い事じゃないけどな。「よ……」「よ?」「よ、よくもどったな! おかえり!」 気恥ずかしそうに言ったミドルスに、イデアが爆笑する。「あっはっはっはっ! アンタにしちゃよく言ったよ、くくくくく……」 お腹を押さえるイデア。ミドルスなんて両手で顔を覆っている。確かに、ミドルスは「おかえり」なんて言う柄じゃないが、応えない俺も柄ではないだろう。「あぁ、ただいま。はははは」「っておいてめぇ! 今笑っただろう!」「ははははは、笑う訳ないじゃないか? はははは」「っ~~!」「まぁまぁ、ようやく銀が全員集合したんだし、そんないきり立つなってー」 イデアになだめられ、ミドルスがムスッとするも押し黙る。そんな雰囲気の中、俺は数日ぶりに会う銀のメンバーにも、ミドルスと同じ事を言った。「おかえり、皆」「おう、おめぇもちゃっかり成長したじゃねーか?」「ホント、さっきの空中浮遊魔法? あれには驚いたね~」 ブルーツとベティーの性格は、今後変わる事がないように思える。ブレイザーとライアン、そしてレイナは頷いて微笑み、ナツは挙手して「ナツ、ナツとシャイニー頑張ったよー!」とアピールする。