自室に入った途端逆蔵が挙動不審になった。
「どうした?」
「いや、なんでも…」
顔を赤らめてモゴモゴと口籠る。
ベッド横の間接照明を点け、そっとベッドに横たえる。
衝撃が来ると思ったのか、キュ、と体が強張ったのが伝わってきた。
「放り投げたりしないから安心しろ」
「そ、そうかよ…」
逆蔵はそわそわと落ち着きなく体を丸める。やはり挙動不審だ。心なしか顔も赤らんでいる。
つま先でベッドのシーツを捏ねまわしたり内腿を擦り合わせたりして視線はキョロキョロとして落ち着かない。
シャツのボタンを外しながらそんな逆蔵を観察し、シャツを脱いでベッドに上がると逆蔵の顔がまた一段と赤くなる。
「───っ」
慌てて右腕で顔を隠してしまう。
「どうした」
「ちょっと、まって…くれ…」
高校の水泳の授業すら直視しないよう気をつけていた逆蔵の話はまた別の話である。
「逆蔵」
「なんだよ」
「目を開けろ」
「っ…」
渋々と開いた目蓋の目尻には朱が走り、瞳は潤んだように見える。
「さっきからどうした」
「…」
「何か…嫌だったか?」
こういう訊き方をしたら素直に話すのをわかってやっていることが知られたら嫌われるだろうか。
「あー…、いや…、えっ…と……この部屋…、全部、お前の匂いで………困る…んぅっ」
その答えにゾクリとし、飛びつくように口を塞ぐ。
口蓋を擽り、歯列を舐め、引っ込んだ舌を吸い出して甘噛みする。
「ん…っん…っぁッふ、ぅ…ッ」
下品な音を立ててぐちゃぐちゃと逆蔵の唇を蹂躙する。
上背もあり、超高校級のボクサーであるほどの肉体を持った逆蔵でもこんなに柔らかい舌や唇をしているというのが他の誰も知らない秘密を知ったような甘美さがありつい捏ねまわしてしまう。
擦り合わせている膝を割り、体を捻じ込ませる。一瞬焦ったような表情が見えるが、反応しかけの陰部を撫でてやると諦めたように大人しくなった。
先程2人で出したものがまだ逆蔵の腹に若干残っている。大半は流れ落ちて家のあちこちに滴っていると思うと少々頭が痛むが、今はそのことは忘れよう。
また腹筋を撫でながらそれを掬い取ると今度は乳首に塗りこむように撫でさする。
「ッぁ…んッん…っ」
今度は右手を噛んで声を抑えようとする。性懲りもない。
「逆蔵、手を噛むな。」
手の甲にキスを落とすと慌てて手を離すが、すぐさま唇を噛み締めている。
仕方がない、とまた唇で唇を塞ぐ。
「んひゅ…ぅッんんっ…ひぅ…ッん」
舌を吸うとビクビクと腰が震えるのが愛しくて何度も何度も繰り返しながら、また乳首をぬるぬると捏ね、爪で弾く。
「ゃ…ッゃ…っひゃゥ…っンんっ」
指の腹で挟んで擦ると面白いくらい腰を捩らせて善がった。
「逆蔵」
「ぁ……」
胸筋から腹筋、大腿筋と撫で降りると、手の動きに合わせて緩やかに体がしなる。
膝の裏に手を掛けて太腿を上半身に寄せると、腕で目元を隠して顔を逸らしてしまう。
呼吸で上下する逆蔵の胸が、塗りつけた体液をぬらぬらと反射して艶かしい。
それを眺めながら内腿を喰む。ここも鍛え上げられた逆蔵の体の中で柔らかい場所の一部だ。
本当に全身どこを舐めても美味しいと感じるのに逆蔵は何が不満なのか。
逆蔵のなら脚の指でも舐められそうだ。
「ッ…っ……っ」
膝の方から徐々に降りていき、脚の付け根まで辿り着くと逆蔵本人も見えないような場所にいくつも痕を残す。
「むな…か…ッた?なんかピリピリ…ッする…」
「大丈夫。少し噛んだだけだ」
「噛む、なよ…」
花びらが散ったようになったのを見て独占欲が満たされ、笑みが零れる。
「にやにやして…きもちわりぃぞ…ッん」
腕の隙間からこちらを覗いて文句を垂れている。