「でも、お嬢。店を大きくしても、アストランティアへ根を張るわけじゃないんだろ?」「ええ、いつでも支店を切り離して旅立てるようにしてあります。誰かさんが逃げ出しても、すぐに追いかけられるように」「プリムラ、それに関しては俺が悪かったよ。ただ、あの場合はマロウ商会に迷惑が掛かると思ってだな……」「聞きません」「はは! 大丈夫だよ、お嬢。旦那が逃げたって俺の鼻ですぐに追いつけるから。特に旦那が使う変な魔道具の臭いは独特だ。逃げられっこねぇ」「にゃー! ウチも絶対に逃さないにゃー!」 くそう、文明の利器による移動は速度は速いが、跡が残りやすい諸刃の剣。「頼りにしていますよ」 ダメだ、プリムラの中では、俺の信用がガタ落ちしているらしい。 まぁ、それも仕方ないのだが……。 暗闇の中、夕飯は続いたがプリムラが何か考え事をしている。「プリムラ、どうした?」「……あの、お願いがあるのですが?」「まぁ君の願いなら、可能な限り答えたいが……」 彼女の話では、貴族のための宝石が欲しいと言う。 もう貴族とパイプを作ったのか? 俺は面倒なのは嫌いなので、貴族を避けているが、プリムラやマロウさんは貴族を利用するだけ利用する、本物の商人だ。 何はともあれ話を聞いてみる事にした。