雲母がそう言うと、アリアは考え込み始める。 そして、ニヤッと笑った。 ……流石に、そんな簡単にいくわけないよな……。 俺はアリアが笑った意味がなんなのかに気付いていたため、アリアの次の言葉が予想できた。「はは、墓穴を掘ったわね! あんたその言い方、その白兎って奴と大して仲が良いってわけじゃないんでしょ? 本当は株の流れを読む事だって、自信があるんじゃなく、その男を信じ切れないから自分で読んだんでしょ? それなのにあんたが人生が掛かっているこの勝負で、大して親しくない人間の言葉だけをそのまま信じるとは思えない! つまり、あんたが平等院財閥の株に人生を掛けたのは、別の人間からのアドバイスで、尚且つあんたがかなり信用を置いている相手――だから、ねぇ、平等院財閥の事を教えたのはあんたなんでしょ、KAI?」 アリアは調子を取り戻すと、そう言いながら俺の方を見た。 俺の名を呼ぶニュアンスから、俺がKAIである事に気付いたのだろう。「今回の平等院財閥のアンチウイルスソフトについて知っている人間は、平等院財閥の人間か、その製作に携わった人物のみ! ねぇそうでしょ? 最早もはや都市伝説レベルに噂をされている、KAIさん?」「一体何のことかわからないんだが……?」 俺はアリアの言葉に首を傾げた。 俺達のそんなやり取りを見ながら、雲母は驚いた顔をしている。 雲母が驚いているのは、俺がKAIかもしれないからなのか、アリアが急に俺に矛先を変えたからなのか――。 アリアが立ち直る事が出来、現在俺に矛先を向けているのは、俺がKAIだと証明できれば、雲母が行ったのはインサイダー取引だと立証出来るからだろう。 しかし、この流れはもちろん想定済みだ。 だから、何も問題ない。「とぼけたって無駄よ? だって、あんたお姉ちゃんと平等院システムズで会ってるでしょ? だから、お姉ちゃんがあんたをカイって呼んでるのよね?」 恐らく、これはハッタリだ。 アリスさんが平等院システムズに通っていた事を、妹であるアリアが知っていてもおかしくはない。 そしてその際にアリスさんと鉢合わせしたと考えるのは、今回の勝負の流れとアリスさんが俺の名をカイと呼ぶことから、その考えに至るのは当然とも言える。 しかし、俺とアリスさんが本当に鉢合わせしている事を知っていれば、もっと早くから俺をKAIだと疑っていてもおかしくない。 なのに、今の今までアリアはその様子を見せていなかった。 だから、これはハッタリだ。「おいおい、負けそうだからって意味が分からない事を言うなよ? 俺もKAIの噂はネットで知っているが、確かKAIは40歳代の男じゃなかったか?」 認めさえしなければ俺がKAIっていう確証は得られないため、俺はとぼける。「ふん、あくまで白しらを切るってわけね。まぁ確かに実力的に私もそう思っていたけど、過去に例外の人間が居た事を私は知ってるの。つまり、実力と年齢が吊り合ってなくても、おかしくないわけ。だから、お姉ちゃんに聞くわ。ねぇお姉ちゃん、こいつをカイって呼ぶのって、こいつがあのKAIだからなんでしょ?」 アリアは俺から言質げんちがとれないと理解すると、アリスさんに尋ねる事にしたようだ。「……」 しかし、アリスさんはアリアの目を見るだけで、何も答えない。