数々の暴言の末。 ついには、国王を謝らせてしまった。「……そ、そうか。分かった。もういい……」 これ以上、Mr.スリムにはマインを怒らせる方法が思いつかなかった。 とぼとぼと去っていくMr.スリムの背中を、マインは「何だったんだろう?」と見つめる。「――待てッ! このまま返すと思ったか!」 不意に。Mr.スリムの左足に、《歩兵剣術》が突き刺さった。「ぐあっ!?」 斬りかかったのは、マインの従者クラウス。「……あっ!」 瞬間、レイスの変化が解け、Mr.スリムの素顔が明らかになる。マインは思わず声をあげた。「やはり。セカンド二冠に化け、その信用を落とそうと企てていたのだな」「ち、違っ……これはぁっ……!」「言い訳無用!」 クラウスの鋭い剣がMr.スリムを襲う。 彼はタイトル戦出場レベルには至っていないが、それでも国内有数の剣の使い手。召喚術師を相手に不意を突いて仕留め切れないような、やわな鍛え方はしていない。 結果、Mr.スリムはその場でクラウスによって両の足を斬られ、隷属の首輪を嵌められ、騎士団に連行されていった。 そして、同時に。レイスの存在が明らかとなったことで、セカンドが何故あれほど鬼気迫る形相で完膚なきまでにMr.スリムを追い詰めたのか、その理由も観客へと広く知れ渡ることとなった。「……彼は余罪が山ほどありそうです」「ええ、間違いなく。徹底して調査いたしましょう」 連れていかれるMr.スリムを見ながら、マインが呟く。 クラウスは頷きつつ、口を開いた。「しかし、流石で御座います陛下。セカンド二冠に化けていることを見抜きつつ、あえて怒りを見せずに対応して、相手に隙を晒させるとは」「…………う、うん。まあ、たまたま、ね」 実は気付いていなかったなんて、とても口に出せないマインであった。