見せてもらおうか、本物の商人の実力とやらを 俺の家に、プリムラの店の見習い――アイリスという女の子がやって来た。 プリムラは、彼女をしばらくここへ通わせて、商売の仕方を教えるようだ。 俺は夕食のメニューにお好み焼きを焼いてみる事に――。 カセットコンロ2台に、それぞれ鉄板を敷き、加熱しておく。 なお、コンロ2台を連結して長い鉄板を載せたりすると、爆発する事があるので注意が必要だ。 キャベツは千切りにして卵と小麦粉を投入。ダシも入れてかき混ぜる。長芋を入れたりする人もいるが、好みによるだろう。 鉄板に豚こまを敷いて、その上からタネを掛ける。まぁ、作り方には色々と流派があるだろうが、俺はこんな感じで作っている。 隣のカセットコンロでプリムラが俺の真似をして、お好み焼きを作っているのだが、これも作り方を覚えて売るつもりだろうか? 火が通ったら、ヒックリ返すのだが肝心な物がなかった。 シャングリ・ラで慌てて、コテを購入。2個で1000円。「よっと!」「わぁ!」「上手いにゃ!」 焼けたら、最後にオ○フクソースとマヨネーズを掛けて完成。かつを節はどうかな? 警戒されるかもしれん。「好みで、これを掛けてみるか?」 俺が乗せたかつを節に皆が反応している。「木の削りカスを乗せてどうするにゃ?」「これは、魚の干物を削った物だよ」「旦那の言うとおりだ、魚の匂いがする」 警戒している獣人達を横目に、真っ先にアネモネが食いついた。「美味しい! これ、美味しいよ!」「そうか、口に合って良かった」「ふみゅ? もぐもぐ――美味いにゃ~!」「ふおっ! こいつは美味い!」「そうだ、ニャメナ用に酒を用意しないとな」 アイテムBOXから赤ワインとカップを取り出した。「はぁ、こんな美味い物と美味い酒。もう、金なんて要らないね」「本当か?」「だって、飯食うために稼いでるのに、美味い物が用意されてるんじゃ、金は必要ないじゃないか」 ニャメナはお好み焼きを頬張ると、ワインでそいつを流し込んだ。「何か欲しい物はないのか?」「そりゃ、武器とか欲しいけどさ」「そこら辺も俺が貸してやる」「本当かい?」「ああ、ミャレーが持ってる弓や剣も俺が貸している物だしな」 もっとも、ミャレーはシャガの討伐で大金をせしめたので、実は金持ちだ。 いい装備も買おうと思えば買える。 だが、全く金を使う気配はないのだが。飯も装備も全部俺が賄っているからな。「――という事は売り物なんだろ? いいのかい?」「ミャレーやニャメナが頑張ってくれれば、元は十分に取れるからな」「そう聞いたら、遠慮は要らないって事か」「多少はしろよ?」「ははは! 解ってるって」 ニャメナは大笑いをして、ワインが入ったカップを夜空に掲げた。「あの、これって凄く美味しいんですけど……このソースが決め手ですよね」 お好み焼きを食べていたアイリスが、鋭い分析をしてきた。 そう――ソースとマヨネーズだ。片方だけで食ってもイマイチ。 両方をあわせる事で渾然一体の旨さが出る。しかし、他の料理でソースとマヨを混ぜてもイマイチなんだよなぁ。 中々、彼女は頭が切れるようだ。プリムラの話では役人の娘らしい。それ故、読み書き計算も出来る。 就職しないと、すぐに嫁にいけと言われるので職を探していたようで、女性1人で商売をしているプリムラを市場で見つけ一目惚れをしたらしい。