「な、何を・・・」近い距離から響く勝己の低い声、掴まれた腕に伝わる熱に焦りと混乱で心臓が大きく速く脈打つ。OFAの事をもしかしてぼんやりとでも覚えているのか、と血の気がひいた。「身体中の細胞がぴりぴりする。思い出せって言われてる気がする。何かがない気がする。重くて鬱陶しいのに、どうしても欲しかった何かが、失くなった。欠けてる、胸ん中のどっかで、なんかが足りてねェ」湿り気を帯びた海風が、向き合う二人の髪を服を忙しなくなびかせる。どこにも逃げ場のない、海と空の間で、「それが、どう考えてもてめーの形してんだよ」と勝己が言った。