ここまで来ると、住宅の様子も都内とは大きく変わる。 ペンション風の家も目立つのは、旅行客向けのお店が多いからだろう。 朝の8時をだいぶ回ったころ、さほど大きくもない駐車場で降りるとわずかに潮風が運ばれてくる。観光客はまだまばらで、親子連れが大半だ。歩くだけで周囲から視線を感じるけれど、皆は気にしていないようなので僕も見習うことにする。 両手を真上に伸ばし、僕の恋人は近づいてくる。「んー、気持ちの良い歩道ね。この先には何があるのかしら」 それはもちろん、ついてからのお楽しみだね。 林のトンネルへ歩道は吸い込まれてゆき、それを追ううち辺りはすっかり木陰に包まれていた。 朝ならではの落ち着いた空気。四季を通じて花が咲き、散歩にはぴったりの場所だろう。そのまま道なりに真っ直ぐ進んでいるうちに、ドライブ疲れはすっかりと晴れてしまった。 やはり緑というのは清々しくて、歩いているだけで心地よい。 まだアスファルトを歩きなれていないシャーリーは、そんな遊歩道をきょろきょろと眺める。まるで第二階層の参考にならないかと観察しているようだ。 と、思い出したように少女は見上げてくる。「あら、気がついたら手を握っていたわ。いつからか覚えているかしら?」「ん、それは難しいね。離したときなら覚えていそうだけど」 言えているわ、と少女は笑う。 刺繍レース付きのワンピースは、薄手のせいか風になびく。ドレープのせいで、そしてエルフらしい透明感のある肌のせいで、妖精のような輝きを秘めている。