夏になると見たくなる映画、というものがある。 それはきっと子供のころ目にし、感動したせいで「夏イコールこの映画」と連想してしまうのだろう。 得てして子供のころの思い出は強烈に残りやすく、僕の趣味も兼ね、今夜はエルフや黒猫に観てもらいたいと思っている。もちろん、2人とも僕よりずっと年上だけどね。 などとDVDを手に持ち、僕は夏の過ごし方について考えていた。 もう間もなくお風呂からあがってくるだろうし、アイスティーの準備も……などと考えていたとき、がたりと脱衣所の戸は開く。「やあ、おかえ、り……っ!?」「あっつーーい!」 戸を開け放ったマリアーベルは、まだ着替えを終えていなかった。バスタオルを身体へ巻き、ぺったりと髪の毛をまとわりつかせた姿へ僕は凍りついてしまう。 透けるよう白い肌には汗が浮き、きゅうとバスタオルを結んでいるけれど、女性としてわずかな膨らみを主張しているよう見えてしまう。 少女はいかにも暑そうに顔を仰ぎ、扇風機へ近づいてゆく。「びっくりしちゃったわ、夏のお風呂あがりはあんなに暑いなんて。んーー、涼しいーーっ!」 前かがみになり、冷風をしっかり肌で受けるとマリーは天国を見つけたような顔をする。そしてクラゲのような氷妖精は、主人であるエルフに気づき、空中をふわふわ泳いで頭へ乗った。 夏になるにつれ、マリーの服装も薄着へ変わりつつある。 肩を露わにすることも増えているけれど、バスタオル一枚になるとまた違った方向性と言うか……、もやもやと彼女の魅力へ気づかされてしまう。 ぺたりと張り付いたバスタオルは、少女の華奢な体つきを伝えてくる。腰のくびれ、女の子座りをしたお尻、そして汗にまみれた太ももや肩は、意外にも魅力を感じさせるものだ。 ――いいかもしれない、バスタオル姿。 何か言ったかしら?と少女から振り返られ、僕は慌てて何でもないような顔をする。できればこの無警戒さを僕は大事にしたいところだ。 あ、今のは少し大人らしくない考えだったかな。 少し反省した僕は、マリーを見ないよう通り過ぎ、冷蔵庫にある麦茶を用意する事にした。「バスタオル姿でうろうろするのは、日本だと少しお行儀が悪いみたいだよ」「あら、あなたしかいないのだから平気でしょう? あ、あ、アイスちょうだい、バニラを残してあるの!」