なら良いわ、と少女は顔をそむけ、そして何もない空間へ手を伸ばす。どうやらいつもの癖で、北瀬の手を握ろうとしたようだ。 寂しげな顔を見せられる前に、ウリドラはその手をぎゅっと握る。マリーも何かを言いかけたけれど、ぐにぐに握っているうちに消えてしまったらしい。OKの意味で少女も握り返してきた。「いいわ、それじゃあ行きましょう。まずはエレベーターのスイッチを押さないといけないのよ」「むう、わしも押したいのう。日本のボタンは何故か押し心地が良くてのう。ほれ、おまけに光るじゃろう?」 そんな会話をしてるうち、ほんの少しだけマリーは楽しく感じ始めていた。 ごうごうと唸る風には湿り気があり、エレベーターを降りるとエルフは真っ暗な空に向けて鼻を向ける。匂いを嗅ぎ、すぐそこへ雨の気配が満ちていることに気づいた。「急ぎましょう、だいぶ近いわ」