俺が次にあげたのは『エクレア』だ。これもプリンと同じ効果で同じ経緯で作った奴である。…衝動的に甘い物食べたくなる時ってあるよね?
「あ、ありがとうございます!……んっ!す、すごいふわふわ!なにこれ!おいひぃ!」
「お気に召してくれたようでなによりです。それじゃあ私はこれで失礼しますね」
「うん!ありがと!お姉さん!!」
「ほ、本当にありがとうございました!」
手をぶんぶんと振り回しながら別れの挨拶をする男の子と、お辞儀をした後に男の子を連れて行く女の子を見送る。
いや~、やっぱ子供は可愛いねぇ。……念のため言っておくが俺はロリコンではない。趣味趣向として「好き」と一般的な感性から来る「好き」は全くの別物という事だ。
それにしても小さいのに随分としっかりした女の子だったな。母親じゃなくてシスターって言ってたのを考えるに教会の孤児院だろうか?どこの世界でも女性が一番強いってことか。
そんな事を考えつつ、いい加減一々脱げたフードを戻すのが面倒になってきたのでそのままにして城門の外に向かう途中で、ものすごく派手で華美な馬車が正面からやってきた。
うわぁ…なんだあの馬車…派手ならいいってもんじゃねーだろ。随分と悪趣味だなぁ。いったいどんな貴族様なんだ?
疑問に思いながらも貴族に目を付けられたら敵わんな。と判断した俺はすぐさまその馬車から視線を外し、再び城門に向かう…が。
「・・・ッ!?」
突如感じた凄まじい悪寒に慌てて周囲を見渡すが、それらしき人はおらず気が付けばその悪寒もすでに治まっていた。
なんだいまのは…?でも敵意を見せたら反応するはずのミニMAPには映ってない…気のせいか?それにしたってなんだかものすごく気持ち悪い悪寒だったな…うぅ、早く忘れる為にも魔獣討伐に行くか!
薄気味悪い悪寒を振り払うように頭を振って思考を強引に切り替えて街の外へと出て行く。しかし、その時もう少し考えていればもしかしたらその正体気が付いていたかもしれない…
「あんな極上の女に出会えるなぞ…麻呂はなんて幸運なのだ。くっひひひ……あの顔を早く歪ませてやりたいでおじゃる…フヒヒヒ…」
そんな喜悦に染まり三日月に口を歪ませた表情でとある人物を見つめていたことに…