ヤの決闘は終わった。 カシミヤが第二位になり、フィガロさんへの挑戦権を得たという結果だけを残して。 ◇「…………」 違った。 もう一つ、残された結果があった。「む? レイよ、呆然としているがどうしたのだ? その手に持っておる券はなんだ?」「……今の決闘の闘券」「またか。それで、今回も<超級激突>と同様にオッズの手堅い方に賭けていて、今度は負けてしまったのか? ギャンブルとは負けるものだぞ。それで、いくら賭けたのだ?」「五〇〇〇」「五〇〇〇リルか。御主にしては常識的な金額だの」 ……いや、違うんだ。「五〇〇〇…………万・だ」「…………おい。おいおいおいおいこのたわけぇ!?」 ネメシスが名状しがたき表情で俺の胸倉を掴んでガクガクと揺らしてくる。「ごせ、ごせんま……あ、あほか御主ぃ!? そんな大金、そんな……えええええ!?」 現実が飲み込めていないのか、ネメシスは上手く言葉も出せない様子だった。 マリーと先輩も「何やらかしてるんです?」という感じの顔で俺を見ている。 しかしルークはニコニコしているので、きっと分かっているのだろう。「ネメシス。違う。逆だ」「逆、逆とはなんだ!?」 いや、だからさ……。「俺、カシミヤに・・・・・賭けたから」「……………………はえ?」 ネメシスは、いよいよ思考回路がパンクしたような表情で呆然と声を漏らした。「なんとなくカシミヤに賭けたんだよ。さっき会ったときに自信ありげだったしさ」 そしたら実際に勝利した。 カシミヤのオッズは五・五倍だったので、五〇〇〇万リルが二億七五〇〇万リルに早変わりである。すごい。「…………言いたいことがありすぎて、もう言葉が詰まって出てこぬ。が、一つだけ言う」「ああ」 ネメシスはこの短い時間で憔悴した顔で俺の目を覗き込みながら、「御主、もうギャンブルするな。怖い」 心の底から吐き出すような声でそう言ったのだった。 何と返したものか悩んで、俺の口から出てきた言葉は、「…………ガチャはギャンブルに入りますか?」 回答は毎度お馴染みのドロップキックだった。