「う~ん……思ったよりも株って動かないんだね~」 ここ数日の株の動きを見たアリアさんが、アリス様にそうおっしゃった。「それは……平等院システムズの株が……安定しているだけ……。普通の株は……数分単位で……凄く動くのが……多い……。それに……極端な例えだけど……一円しか下がってなくても……安い会社の株を百万株もってれば……百万円の損……。株を甘く見れば……大変な事に……なるよ……?」 アリス様は愚妹でしかないアリアさんに、そんな風に優しく株について教えられています。「なるほどね~……。まぁ、今回は勝ちが決まってる様なものだからそんなに焦る必要が無いし、別に構わないわ。それに今回の勝負は雲母なんてどうでもいいしね。私が知りたいのは、神崎がどれほど出来る男なのかよ。株の知識があるのかどうか知らないけど、無いなら無いなりの行動を起こすはず。あ・い・つ・みたいに私に交渉を持ってくるかしら?」 アリアさんはそうおっしゃって、楽しそうに予想をし始めました。 今回の勝負で微塵も負けるとは思っていない様です。 とは言っても、その気持ちもわからない訳ではないです。 なんせ今回の勝負ではアリアさんが圧倒的に有利な事に加え、アリス様が株の流れを読まれます。 それはこの二週間の間で株価が最低になるタイミングがわかるという事です。 ですから私としましても、本当に神崎さんに勝ち目があるのか疑わずにはおられません。 彼がアリス様とした取引内容は複数ありましたし、彼がやろうとしている事もわかりました。 確かにそれなら理論的にはアリアさんに勝てるでしょう。 しかしそれは、アリアさんが株を買うタイミングがわかるという事が、絶対条件です。 なのに神崎さんはアリス様と取引をする際に、アリアさんが株を買うタイミングを教えてもらう様に取引しませんでした。 そして、アリス様も神崎さんにそのタイミングを教えるつもりは無いようです。 となれば、神崎さんはどうやってアリアさんの買うタイミングを見切るつもりなのでしょうか? そこが勝負を分ける鍵になるのに、私にはその手口が見当も尽きません。 だから、私には神崎さんが勝つというのがどうしても信じられませんでした。 それにアリス様も神崎さんが勝つとは明言しませんでした。 ひょっとしたらアリス様にとって、神崎さんはアリアさんの成長の糧にしようとした、ただの当て馬に過ぎないのでしょうか? ……いえ、それはありえませんね。 アリス様はそのような御方ではありません。