「旦那、何をするんだい?」「中身を見てみようかと思って」「うえぇぇ! 正気かい?」 ニャメナが露骨に嫌そうな顔をするのだが――中身はどうなってるのか、俺は気になるんだがな。「何をしてるにゃ? ふぎゃ?!」「なになに?」 アネモネは平気のようだが、獣人達はちょっと混乱しているようだ。「アネモネは平気なのか?」「私も中身を見てみたい」「中から蜘蛛が出てくるかもしれないぞ?」「それじゃ、私が魔法で燃やすから!」 随分と逞たくましくなったものだ。ボウルに入っている蜘蛛の卵に包丁で切れ込みを入れる――。 すると、中から流れ出すクリーム色のドロドロとした液体。「残念、中身は蜘蛛の姿じゃなかったな。もしかして、メスが産んだ直後だったのかも」 卵の殻も虫糸で出来ているようなので、川で洗ってから干す事にした。川でじゃぶじゃぶと洗い、ジェットヒーターを出して温風を当てて乾かす。 その間に、俺が自ら実験台になってみよう。「旦那、一体何を……?」 ニャメナが恐る恐る聞いてくるのだが、説明しても解らんだろう。 先ずはphペーハ試験だな。シャングリ・ラでph試験紙を買う――紙が巻いてある物で200円だ。 紙を引き出すとオレンジ色なので、そいつを卵の中身に漬ける……変化なし――という事は中性だ。 アルカリや酸性だったりすれば、色が変わるわけだ。サイトでは、こんな物も売ってるのだが、何に使われているのだろう――と評価欄を見てみる。 ははぁ、熱帯魚の水質を管理するのために、phペーハー試験紙が必要なようだ。 卵の中身が中性って事は酸性で鉄が溶けるとかじゃないわけか。一応、ボウルをステンレスにしたのは、腐食耐性重視のためでもあるのだが。「それじゃ、ちょっと食ってみるか」 アイテムBOXからカセットコンロとお玉杓子を出して、ほんの少し卵の中身をお玉に塗って加熱する。 クリーム色の中身が直ぐに固まり、薄いシート状になる。 ふむ――見た目は普通の卵を焼いたような感じなのだが……。