「ルールは単純。通常の鬼穿将戦と同じだ」「……む、然様か」 俺がエキシビションのルールを伝えると、エルンテはそれまでの狼狽が嘘のように落ち着いた。自分の土俵で戦えると知って安堵したのだろう。「よいのかね? 一閃座よ。儂は鬼穿将であるぞ?」「ああ。ちなみに、二枚落ちだ」「何。二枚落ち?」 “二枚落ち”とは、ハンデ戦の一つ。上手側が、龍王・龍馬および飛車・角行の4種スキルを封じて戦う手合いの形式を言う。「ふむ、その程度ならばよかろう。舐めてもらっては困るわい。儂は鬼穿将。二枚落ちとて――」「あ? いや、勘違いしてるぞ」「何じゃと?」「二枚落とすのは、俺の方だ」「 」 エルンテは絶句する。 そして。「ふわぁっははははは! はぁっはっはっは! お主は冗談が上手いのう!」「冗談じゃねえよ」「ははは、では何じゃ。洒落か?」「怒りだ」「……っ」 俺は怒っている。 俺を知る人物なら、分かるだろうさ。俺がハンデをつけているのだ。この、俺が、タイトル戦という舞台で、わざわざ、ハンデをつけているのだ。「怒ってるぞ」……と。そういう、宣言だよ。「ほら、これで回復しろ」「……安くないポーションであろうに。随分と親切じゃな」「お前のHPが低いと困る」「手加減されたと思われるのが嫌か?」「俺の楽しみが減る」「…………」 一発でも多く叩き込みたい。「両者、位置へ」 審判の指示に従い、移動する。 瞬間、雑念が消え去った。 いつもの感覚。心穏やか。目的はただ一つ。ひたすら、甚振る。「――始め!」 号令とともに《歩兵弓術》を放つ。「何!?」 エルンテはオーバーなリアクションをとってから、大きく体を逸らして回避した。「見えなかったか?」 多分、そうだろう。