オレと、一緒だ。盗るか盗られるか、奪うか奪われるか。他人を踏みにじって薄汚く生きる。生活するってのはそういうことだった。それしか方法を知らなかったんだ。「下手やってパクられて、金払えねェから自分を奴隷にして金作るしかなかった。ま、結果的にこれが良かったんだけどな」 兄貴はそう言うと、何処か遠くを見つめて言葉を続けた。「檻ん中でクソ垂れるだけの生活してたらよ、いきなり出ろって言われてさァ。んで連れてかれた先にあの二人がいたんだ」「あの二人?」「セカンド様とユカリ様だよ」 セカンド様! オレなんかの下っ端はまだ目にしたことすらねぇ、オレたちのご主人だ。家令兼メイド長のユカリ様は何度か見かけたことがあるが、まだ話したことはねぇ。オレにとっちゃ二人とも天上の人だな。うわー、兄貴はそんな二人と直接対面したのかぁ。やっぱ兄貴はスゲェや。「ハンパねぇオーラしてたわ。俺はただただ圧倒されるしかなかったな。生まれたてのスライムみてェに震えちまったよ」「マジっすか!? 兄貴がっすか!?」「おう。シルビア様もエコ様もヤベェが、あの二人はマジでヤベェぞ」 兄貴の顔が綻ぶ。思えば、皆そうだった。ファーステスト家の四人の話をしている時は、何だか良い顔をしていることが多い。まるで一番仲の良いやつのことを話してる時みてーに。 ……嫉妬、だろうな。オレはつい言ってしまった。