「私もやる!」 俺とミャレーの作業を見ていたアネモネも手伝うと言う。まぁ、電動ドライバーを使って、ボルト締めぐらいは出来るか。 勿論、アネモネには安全帯を付けて、使い方もしっかりと教える。 子供だと過保護にしないで、出来る事はやらせる。俺自身も、もっと彼女を信頼してやらねばならない。 彼女達に手伝ってもらった結果、3日で足場は完成した。 安全の為に崖にもアンカーを打ち込んでロープを使って固定しているが、こんな物を作るのは初めてで、これで安全なのかも不明なのだが……。「おお! やった! 完成した! いやぁ、為せば成るもんだな」「にゃー!」 ミャレーは足場へ駆けていくと、まるでジャングルジムへ登るように、次々と鉄パイプを伝って上に登っていく。「うみゃー! 高いにゃ!」「私も登る!」 アネモネは単管で作られた階段を登って上にいくと、ミャレーと一緒に気勢を上げている。 気がつけば、いつの間にかベルもやって来て足場を隅々まで調べていた。 俺も階段を登り、そこから見える景色を眺めて楽しんでいたのだが――。「ヤバ! もう、こんな時間か。ミャレー! プリムラを迎えに行ってくる」 完成したのが嬉しくて、プリムラを迎えに行く時間を少々過ぎていた。 この世界には個人用の時計はないが、街の鐘の音で大体の時間が把握出来る。聞くところによると日時計と水時計で時間を計って鐘を鳴らしているらしい。 日時計で正午を決めて、それに合わせて水時計を設定する仕組みだと言う。 俺も、この世界の正午に合わせて時計をセットしている。 慌てて、バイクに跨がり彼女を迎えに行くと、既にプリムラは街道で待っていた。「御免よ、プリムラ」「いいえ――崖で作っていた物は完成しましたか?」「まぁ、おおよそな」「よっ! 旦那!」 今日もプリムラの護衛――ニャメナが一緒だ。「今日も遊びに行っていいかい?」「言っておくが、もうお客さん扱いはしないぞ?」「はは、解ってるよ旦那」 ニャメナと一緒に家へ帰り、出来上がった足場を彼女に見せた。「こりゃ一体なんだい?」 ニャメナは一言漏らし、足場へ走っていくと鉄棒の蹴上がりのように次々と上に登って、こちらを見下ろしている。 どうも獣人は、この手の物を見ると登らずにはいられない種族のようだ。