「あ、あ、あ、あ、ふ、ふ、ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!! げふっ!!!」 あ、池谷が吐血したような声をあげて倒れた。しかも、タマシイが口から飛び出てやがる。心眼で見えるわ。 しかしさ、ここまでシリアスで通してきたのに、なんでこんなところでコメディーが顔を出すんだよ。オチに困ったとか言われても反論できねえぞ。 ちーん。 もう本当にこのまま池谷の冥福を祈りたい。俺は心の中で両手を合わせた。 でも、俺もこのままだと窒息死しそう。 白木さんの腕を二回たたいて、ギブアップ。「あ! ご、ごめんなさい!」 幸せなような地獄を見そうな、でもやっぱり幸せな時間だったが、さすがにこんなところでいつまでもパフパフってるわけにいかない。 俺は気を取り直し、再度意思を示すことにした。「……俺ももうここにいたくないわ。じゃあな、佳世。金輪際サヨナラだ」「いやだ、いやだいやだいやだぁぁぁぁ!!! いかないで、祐介、ゆうすけぇぇぇぇぇ!!!」 いまだに跪きながら泣いてすがる佳世の前に、ナポリたんが立ちふさがる。「祐介、もう行っていいぞ。佳世のことは任せろ。……さて、佳世。今度は、ボクにも詳細を伝えてもらおうか?」 腕を引っ張って佳世を立ち上がらせようとするナポリたんを横目で確認してから、俺は白木さんと並んで池谷家を後にした。「さあ、場所移動だ、佳世。な・ぽ・り・のー、錬金ボーナス、はっじまるよー!」「え、ん、だぁぁぁ……いやあああぁぁぁ……」 わたしはいつもあなたを愛しています、と嘘言ってんじゃねえぞ。佳世のクソッタレ。 ナポリたん、あとは任せた。だがマジカルハロ〇ィン5ネタはやめよう、十八歳未満の人には訳が分からないから……って、さっきの北斗ネタもどうなんだろうな。 気がつけば、マンションの住人のやじ馬が数名。先ほどの自分酔いの時は生暖かい目だったのに、今は若干冷たい。 白木さんと一緒に、そそくさとその場を離れた。 ………… さて。 どないしようかと、二人して途方に暮れていると。「……もう、見つめる必要、ないですね」「そだねー」 白木さんに言われ、反射で返事する。もうラ〇オン生活はやめようか。酵素パワーなんてなかった。 代わりに実りはあったが、なんか馬鹿らしいというか、あきれる結果というか。どうにも割り切れない。「……あ、そうだ、白木さん。さっきはごめんね」「さっき? ……あっ」 真っ赤でうつむく白木さん。うーん、さっきの大胆さは何だったのかわからん。 が、池谷にダメージは与えられたようだからいいか。あのくらいじゃまだ気が済まないけどな。「あ、い、いいえ、別にイヤじゃありませんでしたから……」 白木さんはそうはいうものの、なんとなく気まずさも残っている。「何か気分転換でもしたいところだな」 独り言のつもりでそうごちると。 白木さんが即座に反応してくる。「……み、緑川くん。ならば、少し早いかもしれませんが、今後の予定を話すために、わたしの家に、来ませんか? あの、いろいろ話したいこともあるし、あの、口裏を合わせなければならないこともあるし、あの、その……」 しどろもどろになりながら必死で誘ってくる白木さんがほほえましくて、無意識に二回頷いてしまう俺がここにいた。 ちょっとドキドキしていることは、ナイショにしとこう。