バスローブから覗く腕をシーツに投げ出したまま、微かに水気を帯びた淡い金髪をくしゃりと掴み、密やかな溜め息を吐く。
身体の上を這うぬめる感覚に、爆豪勝己は天井を見ながら他の事を考えて気を紛らわせていた。
生娘みたいに恥じらったり、嫌がったりする年齢でもない。
こんな経験がない訳でもない。いや、寧ろ多い方だろう。
現在26歳の爆豪勝己は、今置かれている状況とは全く別の事で気が重かった。
今やプロヒーロー、それもNo2として活躍中の勝己は、有名なヒーロー雑誌の企画である男との対談を予定されていた。
何であいつと対談なんかしなきゃなんねえんだ。
普段仕事は選ばない、お蔭でメディア露出だけは間違いなくヒーローの中でNo1の勝己は苛立っていた。
再び零したその吐息は悩ましく、上にいる男が聞き咎めた。
「今日はどこか上の空だね。何か考え事かな」
「嫌いな相手と対談なんで」
「そうか。今日は対談だったね。No.1ヒーローの……」
「その名前は大嫌いだ。出すんじゃねえよ」
「君の方が優れているさ。何もかも」
薄っぺらな言葉だと、勝己は返事をせずに自分に被さる男を見る。
クソモブが解かった風な口をきくなと思うが、社会的には実業家として名の知れた男は、モブというには少々金と権力を持ちすぎている。
「けれど、私と一緒にいる時に、他の男の事を考えるなんて、悪い子だ」
キングサイズのベッドの上で、肌蹴たバスローブ姿の勝己の手首にキスをして、挙句に手錠を嵌めた相手は、壮年の男だ。
黙ってされるままになっている勝己は、面倒くささに眉を顰めた。