ぱっと口元をほころばせ、少女は嬉しそうな顔をするけれど、しかし……。「ただ、今はマズいかなぁ。だってほら、皆と迷宮攻略の最中なのに、洋服をがらっと変えるのは……」「あっ!」 があんっ!とマリーはショックそうに一歩後退し、そのままうずくまってしまった。 ああ、大丈夫、大丈夫だよ、第三階層の攻略は順調だし、しばらく我慢するだけで済むんだから。 希望を見た瞬間に叩き落されたせいか、起き上がってくれるまで慰めるのは大変だったよ。 さて、ようやくショッピングの再開だ。 店内をぐるりと回り、流行などの傾向を掴んでから一着ずつ見てゆく。 洋服や靴もそうだけど、一着だけを選ぶとなると慎重になるらしく、もし気に入らないようであれば購入しないこともざらにある。 そのときはウリドラに作ってもらえば済むからね。ただ、そうすると1度だけ、それもウリドラ本体のいる時にしか着れない。「綺麗な色をたくさん使っているわね。ほら、こっちのスカイブルーも凄く綺麗。ただ、露出がすこし多いかしら」「やあ、夏っぽいね。マリーは可愛いからどれも似合いそうだなぁ」 そう言うと、少女はちらりと僕を見る。 おすまし顔を向けてくるのは、たぶん「もっと褒めてちょうだい」という意味なのかな。いやいや、誰が見てもマリーは美人だと思うんだけどね。「迷うなら、向こうの試着室を使っても良いみたいだよ。いくつか気になるものを選んでみたらどうかな」「ええ、そうしようかしら。ウリドラも一緒に選んでちょうだい」 にゅい、と鳴いて黒猫は少女に抱かれることになった。 なんだかんだ、ウリドラも洋服のセンスを磨きつつあり、いつの間にやらマリーの信頼を勝ち取っている。そう考えると、僕は外で待っていても良かったかもしれないね。 などと考えていると、マリーはくるりと振り返る。「あなたは水着の審査役。さっきみたいに逃げたら許しませんからね」 ぎゅむりと指でつねる仕草をされると……もう降参です。 2人で決めるのを大人しく見守り、それから試着室へ向かうことにした。