フェルたちと共に、母屋の裏へとやってきた。 仕事を始める前のトニ一家やアルバン一家、元冒険者たちが何事かと集まってきた。「騒がせてすまないな。実はな……」 フェルたちに説明したのと同じことを奴隷一同に説明する。「詰め替え作業が大変になってきてるだろ。コスティ君、もう少し卸す量を増やせないかって、ランベルト商会からも話が来てるんじゃないの?」 ランベルトさんのところとの折衝を任せてあるコスティ君に話を振ると、困り切った顔で「はい、実は何度かそういう話が……」と返ってきた。 だろうねぇ。 石鹸やらシャンプーやらもそうだけど、育毛剤も売れちゃってるもんねぇ。「さっきも言った通り、工事はまだ先だけど、そういう予定はあるから、それまではもう少しここにいるみんなでがんばってくれな」 俺がそう言うと、奴隷一同「もちろんです」と力強く頷いてくれた。「それから、コスティ君もできる範囲で卸すようにすればいいからね。ランベルトさんのとこなら、無理強いするようなことはないと思うけど、強く言ってくるようなら俺に言ってな」 俺がそう言うと、コスティ君はちょっとホッとしたのか「はい」と笑顔を見せた。「さてと、それじゃあ始めるかな」「あのっ」「ん? どうしたテレーザ」 おずおずといった感じでテレーザが声をかけてきた。「切り倒した木はどうされるのですか?」「んー、そうか、そのままってわけにはいかないし、後始末があるんだったな……」 そういや切り倒したあとの木の始末は考えてなかった。 アイテムボックスにしまっておいて、後でどっか街の外の広い場所で燃やして処理するかな。「あの、使う予定がないのであれば、いただけないでしょうか?」「木を?」「はい」 テレーザによくよく聞いてみると、なんのことはない。 石窯に使う薪として使いたいとのことだった。 トニが庭木の手入れで切った枝なんかを薪代わりに使ったりしているようだが、それだけではどうしても足りない。 足りない分の薪は今まで購入していたんだそうだ。「そうだったのか。気が付かなくてゴメンなぁ。そうか、そうだよなぁ。石窯には薪が必要だよな」 テレーザからは何度も焼きたてのパンのお裾分けをいただいておいて、気が付かないとは主人失格だよ。「切り倒した木は、遠慮なく全部薪として使っちゃって。ある程度の長さに切って、端っこに積み上げておけばいいかな? 細かく切っておいた方がよければそうするぞ」「いえいえ、端に積み上げておいていただければ、あとはこちらでやります。ね、アンタ」 テレーザから話を振られた旦那のアルバンが、何度も頷いていた。「分かった。じゃあ、そうしておくな」 そう話がまとまったところで、みんな今日の仕事をやるべく散っていった。「で、お前らはなんでここにいるんだ?」 みんなが散ったあともこの場にい続ける元冒険者組の双子、ルークとアーヴィン。「俺らは今日休みだから、暇なんすよ」「そうそう。木を切り倒すって、フェル様たちがやるんすよね? 面白そうなんで見物っす」「見物ってなぁ、お前らは。まぁ、いいけど、邪魔だけはするなよな」「そんな、邪魔なんてしないっすよ~」「そうそう、そんなことしないっす」 物見遊山の双子は放置して、俺たちは仕事に取り掛かることにした。「それじゃあ、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイ、それぞれ木を切ってほしいんだけど」