「池谷君は、わたしをちゃんと見てくれなかった。わたしを理解してくれなかった。わたしにうわべだけの笑顔しか見せてくれなかった。それでも、初めてできた彼氏でした。わたしを少しは好きでいてくれると思ってました。でも、違ったようです。やれればよかっただけなんですね。さすがに愛想が尽きました」 ヤッバ。白木さんを怒らせたらこんなに冷えた。この前のツンドラは仮の姿か。今回は真・ツンドラだな。 いやね、今まで愛想つかしてなかったのかとはちょっとだけ思ったけど、心のどこかに何かが残っていたんだろうな。俺と同じく。 墓穴掘っちゃったよ。助けて、ナポリたーん!「知り合ったばかりの緑川くんでさえ、こんなわたしをたくさん気遣ってくれるのに、こんなわたしのために、わたしの……あああぁぁぁ……しょせんわたしなんて、わたしなんてぇぇぇぇ……」 いやーん! 白木さん、お願いだから泣かないで! 俺キョドッちゃう! ……ああ、いつまでもナポリたんに頼るのは男らしくない。頑張れ俺!「だからそんなことないって! 白木さんはおっぱいデカいけど癒されるし、おっぱいデカいけど会話の話題が豊富だし、おっぱいデカいけど面白いし、おっぱいデカいけど笑顔がかわいいし、おっぱいデカいけどいつも一緒にいたいと思うし!」 もう何言ってるのかわかんねえ。おちゃらける余裕もないわ。「……えっ? みどり……かわ……くん……?」「……あ」 少しのタイムラグがあって、俺、固まる。白木さんも同じく。 まーたやっちゃったよ、間男のまねごとを。 気まずすぎてしばらく無言でいたのだが、白木さんが、潤んだままの瞳でこっちを見ている。ああ何か期待してるのかな。困る。 おろおろ。おろおろおろ。気分は流浪人るろうに。 この自滅にも近い惨状を見かねたナポリたんが、またボリボリと頭を掻きながら、ため息で吐き捨てた。