「アネモネ、ちょっと待て。今、草を刈るから」 アイテムBOXから草刈機を取り出すと、バリバリと草を刈り始める。「な! なんの音だ?!」 けたたましいエンジンの音に、ニャメナが戸惑っている。「草刈の魔法の音だ。直ぐに終わる」 周囲をぐるりと刈って、崖の縁が見えるようになった。渡した長足場の端に杭を打ち込むと、こちらからも動かないように固定した。「ケンイチ! 行ってもいい?」「ああ、いいぞ。 気をつけてな」「うん」 アネモネがプリムラと一緒に階段を手を付いて上り、恐る恐る長足場を渡ってくるのを抱きとめた。「わぁぁ、凄い! 湖の端まで見えるね」「ああ、あそこにサンタンカの村も見えるぞ。だが村の他には、湖の周囲に人が住んでいるような節は見えないな」 クロトンの一件以来、サンタンカの連中は何も言ってこない。こちらには全く興味がないようだ。 それに、クロトンというよそ者を入れたために、トラブルを引き込んでしまったのだから、余計に排他的になったのかもしれない。 干渉されるのは好きじゃないから、好都合って言えば好都合なのだが。「本当に崖の上に上れるとは……旦那、凄すぎるよ!」「人には内緒でな」「こんなの誰も信用してくれないよ」 ニャメナが呆れた顔をするのだが――それを見たプリムラが笑う。「ふふ、皆さん同じ事を仰るのね」 プリムラの言うとおりだな。 金属のパイプで数日で足場を組んで、崖の上に上るための階段を作った――なんて言っても誰も信じないだろう。「にゃー!」 喜び勇んでミャレーが森の中へ駆け込んでいくと――それに一緒についていく黒い影。 いつの間にか階段を上ってきていた、ベルだった。 梯子だと彼女は上れなかったかもしれないが、この階段なら森猫でも上れるのだろう。「おいおい、もうちょっと慎重になれ!」「旦那、怪しい気配はないけどねぇ」「そうなのか?」 獣人達は警戒していないし、ベルもそうだ――と言う事は大丈夫なのだろう。 しかし、こうやって突っ込んでいって、デカい魔物をトレインされるのは困るんだがなぁ。「ケンイチ! いい物があるにゃ! こっちへ来るにゃ!」「なんだなんだ」 ミャレーの大声に惹かれて、森の中へ脚を踏み入れる。 中へ入れば薄暗いので下草が殆ど茂らず腐葉土が見えるのは下の森と一緒だ。 ミャレーが叫んでいる場所へ向かうと大木の周りに薄っすらと白い輪が見え、そこから細長い物が生えている。