「「へえ、完全に憑依したら他の人にも見えないのか」「そうみたいね。ふうん、霊体というより私の精神体と同じ幽体なのかしら」 ひょこりと再びリビングへ現れたシャーリーは、知的好奇心の強いマリーにつんつん突つかれてしまった。まあ僕には霊体と幽体の違いなんて分からないけどね。 ともかく、姿を隠せるなら出掛けるという選択肢も出てくるわけだ。そういうわけで本日の遊び先を決めようか。 日本にはいくつもの娯楽があるけれど、今回はシャーリーの興味を示していた和風庭園が大きな候補だ。「みんなは庭園に行く予定だったよね。庭といえば和風のほかに洋風の本格ガーデンもあるけれど、どっちが良いかな」「よくテレビで見かけるガーデニングね。あれは春と秋が綺麗らしいわ」 皆の会話をシャーリーはきょときょと眺め、そして同時にわくわくとした感情を芽生えさせている。自然への関心が強い彼女は、新たな扉が目の前に現れたよう感じてるかもしれない。 ならば、これは是非とも彼女を楽しませないといけないね。「うーん、それじゃあ間を取って、和風と洋風の混じった館を見に行くというのはどうかな?」「ふむ! それは良い! しかし日本人はなにかと文化を混ぜて楽しみたがるのう」 ウリドラからの突っ込みは、甘んじて受けるしかないね。 まあ、ミーハーなんだよ日本人は。 和洋折衷をしたがるし、それがまた新たな文化を創ってしまうのは面白いところだけど。食もそうだし、西洋の服をアレンジして、あらたな流行を海外にもたらすのも日常茶飯事だ。 ずずっと日本茶をすすると、おいしい、と感情が漏れてくる。 うん、確かに食事をしたらだいぶ身体が楽になったな。これではズル休みかもしれないけれど、今回ばかりは深く考えることをやめようか。「それじゃあ着替えたら出発しよう。せっかくシャーリーが来たんだから、ゆっくり話せる車のほうが良さそうだね」「ええ、そうしましょ。コンビニでジュースを買って、それから音楽を聴きながら遊びに行くの。んふふ、平日なのに楽しみになってきたわ」 やあ、それは僕の台詞だよ。 たっぷりと皆で平日を過ごせるのなら、たまにはズル休みも……いやいや、さっきまで具合は悪かったんだからズルではないと思おうか。 そういうわけで僕らはお休みを満喫すべく、準備を開始することにした。 ただひとつ気がかりなのは、僕はどうやってトイレに行けば良いのか、という事だね。