「あ、そこ、いいかもっ、しれないわ」「ちょうど汚れの溜まりやすい所だね。もう少し拭こうか」 こくりと少女から頷かれたので、耳先をつまんでから溝の掃除をしてゆく。 いつの間にやら少女は親指の腹を噛んでおり、とろんと眠そうな瞳をしていた。 では、そろそろ耳かきを始めようか。 棒を手に取り、日差しを耳穴へと当てて覗き込む。 すぐ近くの溝へと木製の耳かきを当てると、ぴくっとマリーは震えた。「あ、ちょっと怖いわね……。ん、ん、やあ、こすられて……」「危ないからあまり動かないようにね」 耳奥を掃除されるというのは初めての体感だったらしく、こするたびに肩を震わせ、そして指を噛む。 うーん、こうして見ると人の耳とあまり変わらない気がするな。といっても何度も人の耳を見たりしないけど。 ゆっくりと奥へ入れてゆくと……おお、あったあった、大物だ。 カリッと棒先へあたる感触に、僕は内心でのめりこんでしまう。確かめるよう何度か前後すると、カリッカリッと感触は伝わる。「う、なにか見つけられた感じがするわ!」「いやあ、気にしないで欲しいなあ。さあ、頭を動かさないようにね」 マリーはきちんとした耳掃除をしていない。 それはつまり、百年近く溜まり続けていたということか。それでも全体的に綺麗なんだけど、しかしこれはおそらく本物だ。 痛くならないよう気をつけ、カリッ、カリッと押し当てる。 ああ、これが取れたら気持ちいいだろうなー。 ごろっと取れたら最高だろうなー。などと僕は夢中になってしまう。 いつの間にやらマリーも同じ思いをしていたらしく、ひくひく太ももを震わせつつ耐えている。じっとりと肌は汗ばみ、どこかマリー特有の甘い匂いを覚えてしまう。 ――ごろり。「おっふぅ……」 ゴロッとこそげ落ちたその快感たるや、天にも昇るよう……というのは言いすぎか。 少女も気持ちよさそうに身もだえし、それから蕩けた瞳をこちらへ向けてきた。「いやぁ、取れたねー。見てごらん、こんなに大きいよ」「わ、大きい! けど、ちょっと恥ずかしいわ」 互いに鑑賞をしてスッキリすると、戦利品のようにティッシュへ包むことにした。「じゃあ、もし良かったら反対側を始めようか。嫌じゃない?」 そう尋ねると少女は返事代わりに体勢をひっくり返し、ぽすんと僕のお腹へ顔を押し付けてくる。 ぱたぱた揺れる足といい、どうやら楽しみにしているらしい。 赤くなった耳をつまむと、押し当てられた少女の鼻から「んふーー」と楽しげな息を伝えてくる。 ゆっくり傾きつつある午後の日差し。 そんな時間帯にエルフの長耳を綺麗にするというのは、なぜか贅沢な事のように感じられた。 …………。 このあと、エルフさんに沢山耳かきしてもらいました。