否、単純なステータスが遺伝しているわけではないだろう。そう、つまりは、ネヴァドの「NPC特有のおかしな成長タイプ」が遺伝しているのではなかろうか。その成長タイプとは、超体術特化型なのではなかろうか。ゆえに、孫娘のノヴァはこれほどまでに【体術】に特化しているのではなかろうか。 これが、俺のぶっ飛んだ予想だった。「お前の親も強かっただろう?」「無論。バルテレモンは闘神の血筋よ」「だろうなあ」 ほら、当たってんじゃねえの? そんな気がする。「お喋りはほどほどに、だ」「ああ、すまん、つい気になってな」 さて、スッキリしたところで再開か。ノヴァ。お前もまた天才というやつなのだろう。確かな才能とそれに準ずる技術を感じる。加えてステータスもゴリッゴリ。おまけに頭も相当に良いのだろう。会話の節々から聡明さをひしひしと感じる。その豪快さ、思い切りの良さ、漲る自信と気概、見え隠れするユーモアも気に入った。 文句なし。これ以上贅沢を言ったら罰が当たりそうなほどだ。「どうした? お前から来ないなら、私から――」 …………ごめんな。 何ヵ月だろうか。一年以上、経つだろうか。 血沸き肉躍る勝負。 もう、我慢できそうにない。「 」 瞬間、彼女は絶句した。 ノヴァのその息を呑む様子が、一気に噴き出る汗が、瞬時に握りこまれた拳が、不規則な呼吸が、弾む心臓の音までもが、俺の耳の中でゆっくりゆっくりと荘厳な音楽を奏でる。 すう、と胸いっぱいに息を吸い込み、懐かしい香りを楽しんだ。 まるで、一秒が十秒にも百秒にも感じるような、至福の一時。 準備は整った。 さあ、篤と御覧じな―― ――『セブンシステム』 「!!」 まずは間合い詰め。 身を竦ませている場合ではないと気付いたのか、ノヴァは即座に反応を見せた。 駄目駄目、0.3秒も遅れてる。 だがそれを弱みのままにするような相手ではない。 初動の遅れを利用し、後退しながら《角行体術》の回し蹴りを狙うようだ。 なら、あえてそこを崩させてもらおう。「う……!」 初手、《桂馬体術》から、発動直後キャンセル、《香車体術》に繋げ、桂馬の初速を利用した蹴り上げ。 二手目、ノヴァは角行キャンセルからの《金将体術》で腕をクロスし、防御勝ちを狙う。 三手目、俺は蹴りをあえて横方向に外しながらくるりと背中を向け、《龍馬体術》の準備を開始。 四手目、警戒したノヴァが金将キャンセルの後、《歩兵体術》で潰しにかかる。 五手目、《龍馬体術》を0.02秒後にキャンセルし《歩兵体術》に切り替えていた俺の方が先に準備が完了する。「ぐ、ぅ……!?」 五手一組、ノヴァの腹部に俺の《歩兵体術》が突き刺さった。 次いでノヴァから打たれた《歩兵体術》を直視して躱しつつ《桂馬体術》を準備し、ゼロ距離で発動。「――ッ!」 飛び蹴りがノヴァの喉元にヒット。そのまま押し出すように思い切り蹴り飛ばす。 これでダウン状態だ。「繋げるぞ」 一言断って、コンボを繋げる。 突き進み、膝をついた体勢のノヴァへ《金将体術》でタックル、追い込みながら《歩兵体術》を一発入れてダメージを稼ぎ、《香車体術》で足払い、《角行体術》のサマソで浮かせて、《銀将体術》で落下してきたノヴァの顔面に拳をめり込ませて吹き飛ばす。 完全にダウン。ノヴァは床に伸びていた。 まだだ。これしきで諦めるような相手ではない。 俺は抜かりなく《飛車体術》を限界ギリギリまで溜め、最大威力の状態でダウンから復帰したばかりのノヴァへと放った。「クハァッ!」 ノヴァは血反吐を飛び散らせながら満面の笑みを見せ、同時にスキルを発動する。 《歩兵体術》……すなわち、飛車と同系統のスキルを、同じ速度と方向で、同じタイミングで。「――なッ!?」 わかってるよ。お前が最後に相殺を狙いに来ることは。