「はは、うめぇだろ? こんな食事を毎日してたら、ニャレサも旦那なしじゃ生きられなくなるぜ」 得意げな顔をしていたニャメナに、呆れ顔のミャレーの突っ込みが入る。「これだから、トラ公はアホだにゃ」「なんでだよ?!」「獣人の女を増やしたら、ウチらの分前が減るだけだにゃ」「うっ!」 長いテーブルにつくと、プリムラが皆にカレーを盛る。 初めて見る怪しい料理に、男爵夫妻は緊張していたのだが、元王族がパクパクと食べているのを見て――。 スプーンでカレーを掬うと、口へ運んだ。「これは、なんと素晴らしい香辛料料理でしょう!」「まったくだな。このような素晴らしい料理は食べたことがない」 男爵夫妻は俺の前に座ってカレーを食べて、絶賛している。「このカレーは、いつ食べても美味い」 男爵夫妻の娘、カナンも一緒にカレーを食べているが、ジャージのままだ。 これだけは、親になんと言われても着替えるつもりはないらしい。「これだけの素晴らしい料理は、城でもなかったのだぞ?」「そのとおりじゃな」 元王族2人のカレー談義に、男爵夫妻も興味深そうに、耳を傾けている。 話を聞いていた俺の足下に黒いものが巻き付いた。「にゃー」「なんだお母さん。機嫌は治ったのか?」 ベルをなでてやると、ゴロゴロと喉を鳴らしているので、ネコ缶をあげた。「え!? 森猫様!?」 驚いた声を上げたのは、ニャレサだ。 その声を聞いたベルが、ニャレサの所へ向かう。森猫を目の前にした彼女が地面に膝をついて拝み始めた。「そういえば、ミャレーとニャメナって、ベルを様付しないな?」「ウチの部族では、してなかったにゃ」「俺たちの部族でもだな」「部族によって違うのか」 理由はそれだけではないらしい。「それに――森猫に様付けなくてもいいって言われたから……」「ウチも、ダリアの森で会ったときに、そう言われたにゃ」「え~? そうなのか?」 獣人たちと森猫の間に、なぞのコミュニケーション手段があるらしい。 彼女たちに聞いても、なんとなく――みたいな感じで、はっきりとは解らないようだ。