さて、作品構成をめぐる問題の再検討のために、従来の「注文の多い料理店」研究が問題としてきたことを確認することから始めていこう。この面でも、それ以前からの〈読み〉の到達点を踏まえ、問題の焦点を明確化したのは恩田逸夫であった。恩田は、前述のように作品の構成を把握した上で、「注文の多い料理店」を「〈自然〉に対して勝手な注文を出して破壊してきた〈人間〉が、逆に〈自然(山猫)〉から注文をされている、という諷刺」というような〈読み〉を提示した。恩田の〈読み〉でその後の検討対象とされてきたのは、さきの構成をめぐる問題ではなく、この自然対人間という〈読み〉の問題に関してであった。