わたしは騎士さんたちを見送ってから、すぐにゼロ・フィールドで氷付けになった大地の調査を始める。 ただ、このままだとわたしも氷付けになっちゃう…… ゼロ・フィールドの内側に漂うマナは、吸い込んでしまうと体を凍らされてしまうのだ。 だから、「囲え……『イグニス・キューブ』」 わたしは自分の周囲に、箱型の結界を展開させた。 結界の外側では炎が揺らめき、わたしが立っている周辺の地面が燃えて黒く変色していく。 本来の用途は、相手を中に囲い込んで焼き殺すものだ。 普通は結界内部にも炎が出ている。 しかし、マナを操作して内部の炎を消してしまえば、外側だけが燃える防御魔法に変化させることができる。 ただ、それなりにコツがいるので、魔法経験者にもあまりおススメはしない。 下手をすると自分の身を危険に晒すことになるから。 それでも、物理的に殴ってくる相手に火傷を負わせたり、自身の身を守ることが出来る攻防一体の万能盾になるので、わたしはそれなりに重宝したりしているのだが。 まぁ、そんなことはさておき。これならゼロ・フィールド内でも活動できる。 体を凍らせるマナも、炎のマナに触れれば、お互いの相性で相殺されてしまうので、私が氷付けになる心配はない。「え、え~と、ゴーレムの活動は……止まってる。こ、これなら、ゼロ・フィールドを消しても問題なさそうかな」 ゴーレムは冒険者ギルドで危険度B級に指定されている魔物である。 並みの冒険者や騎士の攻撃程度なら弾いてしまうので、実力のない者であれば、1体を相手にするのも危険な存在だ。 そして、さすがに私でも、この数のゴーレムを相手にするのは難しい。 正直、全滅しててくれたのは助かった。 それにしても、「で、でも、一体誰がこんな大掛かりな魔法を……それにこんな大量のゴーレム、いったい何処から……」 そう。問題はそこだ。 この魔法は大群用と呼ばれる規模の大きなものだ。 おいそれと発動できるものではない。もし、発動できるとしたら、わたしのような賢者か、大魔道士でもなければ個人での発動などまず無理だ。もしくは、この魔法を1人で発動できるとすれば、それは勇者くらいであろう。 ……でも、勇者はもう、この世界にはいない。 新しい勇者が出現したという噂や、報告は聞いたこともないし、この魔法を発動したのは、少なくとも勇者ということはあるまい。 ならば大魔道士? ううん。違うと思う。 わたしが知る限り、ゼロ・フィールドの魔法を発動できる人物なんて、勇者とわたしを除けば1人しかいない。 しかし『彼女』は王都の研究室に篭り切りで、ろくに外へ出てこないと聞く。 となれば……「ぼ、冒険者ギルド、かな……?」 おそらく、このゴーレムの侵攻を予測していたシドの冒険者たちが、複数人で仕掛けた、というのが、可能性としては一番高いだろう。 まぁ、それならそれでいい。 ここに魔法を放置していたことに関しては、厳重に注意することになるけど、まぁその程度だ。 町からも距離は離れているし、見たところゴーレム以外に被害を受けた生物の姿もない。 つまり、人的な被害はなかったということ。 まぁ、それでも……